大坂の「活判所」が開設されたのは明治3年のいつ頃か 本木昌造が長崎で起こした活版印刷事業は、明治3年から5年にかけて、大阪、京都、横浜、東京と東漸し事業拠点を増やしていきます。最初期の伝記資料である「本木昌造君の行状」には、次のように書かれて…
前々回の「#組版書誌 ノオト:宮澤賢治『春と修羅』初版本(関根書店、大正13〔1924〕)本文および本扉ならびに詩題の組み方について」を踏まえて前回、「宮澤賢治『春と修羅』初版本は活字組版を4頁掛にして「手刷の小さな機械」で刷ることができたか」を検…
さて、小倉豊文「『春と修羅』初版について」(宮沢賢治研究会編『四次元』昭和30年4月号〔第7巻第4号〕、復刻版:国書刊行会『宮沢賢治研究 四次元 第4冊』〔昭和57年〕)には、『春と修羅』初版本を手掛けた「地元花巻の印刷屋」のことが「田舎町の印刷屋…
先日の「宮澤賢治『春と修羅』初版(関根書店、大正13〔1924〕)各本の様々な込物飛び出し跡とTypographic errorなど」(2025/09/22)に記した通り、「宮澤賢治『春と修羅』初版本に使われている活字のうち盛岡の山口活版所から買い足されたものを想像する(…
金属活字、写植、デジタルフォントと技術環境の変化に寄り添いながら和文活字書体を供給し続けてくれている株式会社モトヤ(https://www.motoyafont.jp/)は、昭和331958年に社名変更するまで、株式会社モトヤ商店という商号を掲げていました*1。株式会…
先日の「宮澤賢治『春と修羅』初版本に使われている活字のうち盛岡の山口活版所から買い足されたものを想像する(前篇)――大正末の山口活版所の仮名活字はどのようなものだったか――」と「宮澤賢治『春と修羅』初版本に使われている活字のうち盛岡の山口活版…
2025年8月29日付「〈『カムイ伝』の「印刷原版」〉としてネットオークションに出ていた小島剛夕『土忍記』亜鉛版の素性が知りたい話」に対して、『コミックmagazine』での初出掲載からほどなくして編まれた作家別(作品別)「長編コミック傑作集」の版なので…
近畿地方のある印刷所さんに伝存していた1731本――このうち45%強が有徴ピンマーク入り――の初号明朝活字を3年がかりでお迎えさせていただいたのですが、最終便の中に1本、特殊な製法による活字が含まれていました。 中空ボディーの初号明朝活字「滅」脚部(斜…
新聞やマンガ雑誌の印刷というと、輪転機用の曲がった鉛版・亜鉛版を思い浮かべてしまうわけですが(「マンガ雑誌の樹脂版」(2010/10/29)・「マンガの印刷と樹脂版」(2012/04/17))、2022年第1四半期からヤフオクに出ていて9月末に落札された「島原新聞…
「今」印ピンマーク入り初号フェイス活字(斜め方向)「今」印ピンマーク入り初号フェイス活字(ピンマーク正面方向)これもまた先日の「★印ピンマーク入り初号活字は東洋活版製造所が鋳造したものであろうと判断するに至った話」で触れた、「印刷業者名鑑」…
「カネヨ」印ピンマーク入り初号フェイス活字と一号フェイス活字(斜め方向)「カネヨ」印ピンマーク入り初号フェイス活字と一号フェイス活字(ピンマーク正面方向)先日の「★印ピンマーク入り初号活字は東洋活版製造所が鋳造したものであろうと判断するに至…
「○河」印ピンマーク入り初号フェイス活字(斜め方向)「○河」印ピンマーク入り初号フェイス活字(ピンマーク正面方向)先日の「丸に篆書「木」のピンマークは木戸活字のものなのか興文堂あるいは鶴賀活版のものなのか #NDL全文検索 で館内限定資料から手が…
少し前に、「★」印のピンマーク入り初号活字を入手していました。 「★」印ピンマーク入り初号フェイス活字(斜め方向)「★」印ピンマーク入り初号フェイス活字(ピンマーク正面方向)先日の「丸に篆書「木」のピンマークは木戸活字のものなのか興文堂あるい…
明朝の漢字と和様の仮名という組み合わせは別に珍しくもなく、目がすっかり馴染んでしまっているけれど――それでも例えば天野御民『詠史百首』(https://dl.ndl.go.jp/pid/872922/1/10)のように新しい和様二号多用例を見つけるとメモを残さずにはいられない…
弘道軒「篆体片仮名」(明治23年) 明治21年12月18日に公布された勅令第85号「意匠条例」(https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/Detail_F0000000000000014318)によって和文活字書体の保護が企図された最初の事例と思われるのが、弘道軒の神崎によ…
少し前に、「"齧られ丸"に篆書〔木〕」のピンマーク入り初号活字を入手していました。 「"齧られ丸"に篆書〔木〕」ピンマーク入り初号フェイス活字(斜め方向)「"齧られ丸"に篆書〔木〕」ピンマーク入り初号フェイス活字(ピンマーク正面方向)以前、大正11…
実は昨年の初夏、字游工房の中野正太郎さんが「August Beyerhaus(美華書館二号活字の制作者)について」というnote記事を書かれた直後にお目にかかってサシで諸々お話しさせていただく機会に恵まれました。当日伺った「現在進行中」の話題が、2024年8月に公…
「俳句がもっと楽しくなるポータルサイト」と銘打たれたウェブサイト「セクト・ポクリット」で2024年11月下旬に始まった新連載「ハイクノスガタ」ですが、字游工房の書体デザイナであり俳人である木内縉太さん(https://x.com/kinouchi9)による第1回「子規…
職場の室内履きとして10年使っているクロックスの、なぜか右だけ何度も接着剤がヘタレて剥がれかかってしまう。しかも決まって右後半部。ここ3年ほど、その都度セメダインスーパーX2(シリコーンゴムにも効くと謳う数少ない接着剤)で補修している。先週右後…
母が先日逝去した。平均寿命には届かなかったが、天寿を全うしたと言ってよいだろう。弟が実家に同居し、晩年の父・母を支えてくれていた。アルツハイマー型認知症の診断が下りる以前から本人的には自分が本調子ではないという自覚があり何度も検査を受けて…
宮澤賢治『春と修羅』初版本(関根書店、1924〔大正13〕)について、ウェブOPAC類で所在確認してみました。紙の本については所在情報確認順に丸数字(①②③……)で通し番号を振り、全ページの閲覧が可能なデジタル画像についてはアルファベット(ⒶⒷⓒ)を振りま…
森荘已池『宮沢賢治の肖像』(津軽書房、1974年)に要所要所で出てくる、山口活版所の当時の代表者山口徳治郎氏からの聞き書きのうち、「『注文の多い料理店』二人」の項で取り上げられている話(「昭和15年2月7日の聞き書き」)に曰く(252頁 https://dl.nd…
ここしばらく集中的に調べている地方別の「謎の五号仮名」用例。先日の「岩手における「謎の五号仮名」用例を探してみて仮称「西磐井活字」は盛岡市内丸の山口活版所で明治30年代に使われていた本文活字だったのではないかと驚いている話」にある通り、どう…
このところ追っている、「『日本』紙や『国家経済会報告』等に見える謎の五号仮名」の件。「北の大地に渡っていた謎の五号仮名」で見た北海道の事例に続く前回「青森と秋田の「謎五号」用例」で北東北のうち国会図書館デジタルコレクションで出版地が青森と…
昭和18年の『日本目録規則』(https://dl.ndl.go.jp/pid/1122648/1/22)や『日本目録規則 1952年版』(https://dl.ndl.go.jp/pid/2932039/1/27)以来の規則により、出版者の所在が「町村」の場合や同名弁別のために都道府県名等が付記される場合を除いて、「…
このところ追っている、「『日本』紙や『国家経済会報告』等に見える謎の五号仮名」の件、「北の大地に渡っていた謎の五号仮名」で見た北海道の事例に続いて、今回は北東北のうち国会図書館デジタルコレクションで出版地が青森と秋田の資料状況を見ておきた…
1930年代から40年代に東京築地活版製造所以外で売られていた「築地体」の活字 例えば森川龍文堂『活版総覧 : 和欧文活字と印刷機械』(昭和81933年 https://dl.ndl.go.jp/pid/1209922/1/20)に見られるように、東京築地活版製造所以外でも「築地体」の活…
はじめに これまで何度か記してきた、秀英舎の五号活字は明治191886年頃から少しずつ小さくなり、明治231890年を境に築地格(略1呎82字:3.71mm角)から秀英格(略1呎83字:3.65-3.67mm角:10.4pt)に切り替わるという話。これは東日本大震災の前に…
NHKのファミリーヒストリー「大泉洋 ~北の大地に希望を託して~」。――2024年12月29日の本放送を見逃していたのですが、2025年1月4日に流れていた再放送の冒頭20分ほどを家事の合間に流し見ていて目に留まった印刷資料があり、1月5日20時41分まで視聴可能と…
2018年5月に横浜開港資料館でお話しさせていただいた「近代活字と明治の横浜」関連公開講座第1回「活字と活字見本帳の語るもの」のために東北大学附属図書館所蔵の『東京日日新聞』原紙をコピーして私製していた勧工寮の五号仮名一覧に、横浜市歴史博物館小…