日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

2010-01-01から1年間の記事一覧

共同印刷での三谷幸吉「さんづけ」の理由

少し前にツイッター経由で @kzhr さんに複写取得を依頼しお送りいただいてゐた、三谷幸吉『直ぐ役に立つ植字能率増進法』(一九三五、印刷改造社)。一一〇頁あたりから、かういふ話が進む。 私が東京印刷會社に於きまして數字物組版及四分アキ物組版の研究を…

東京築地二丁目「活版製造所」M15『貮號活字總數目録 全』

読んで字の如く。 以前記した、長崎県立長崎図書館が所蔵する「活版製造所」の『貮號活字總數目録』の件なんだども。 このたび実見することができた。 奥付には東京築地二丁目十七番地の活版製造所とあり、版心に「東京築地活版製造所」と記されてゐる。 板…

神戸芸工大『トビオ』所収「海賊版から見たアジアまんが史」

リツイートのありがたみをしみじみ。本件は @nnnnnnnnnnn さんのツイート*1を @guilloid さんのリツートによって知った。 神戸芸術工科大学まんが表現学科オフィシャルマガジン『トビオ』所収の「海賊版から見たアジアまんが史」。これはすごい。 今年相次い…

国会図書館等に近過去の紙資料を電子納本できないか

国会図書館が、電子書籍や電子雑誌などの「オンライン納本」を制度化しようとしてゐるらしい*1んだども。 生粋のデジタル資料だけでなく、これまで所蔵されてゐなかった紙の資料を電子納本するといふことは検討対象にならないだらうか。 といふのも、国会図…

ePUB用外字フォント作成記SVG篇

以下、id:works014 さんの「ePUBの外字/iBooksでの表示_SVGフォント」におけるSVGフォント作成部分のサイドストーリー。 …… さて、@works014 さんのtweetば拝見してSVGフォントの作成を申し出た際、己はSVGフォントのことを軽く考へてゐた。 SVG 1.1仕様は現…

マックス「のし紙ライタ」の「て」の件

さて、マックス「のし紙ライタ」の変体仮名が一文字読めなかった件について、かつみ様から頂戴したコメントに従ひ、児玉幸多『くずし字用例辞典』普及版(asin:4490103336)ば拝読。 うーん、確かにお教え頂いた通り、1266頁さ当該字形っぽい書き方の「天」も…

マックス「のし紙ライタ」の変体仮名一文字読めず

以前つぶやいてた*1、マックスの「のし紙ライタ NW-200」が実装する94文字の変体仮名。 残念ながら己は、F7E6(「て天」と「あ阿」の間)の字母が判らなかった。いろは順なので「て」か「あ」なんだらうけど。うーん。 どなたかご教示くださいますよう、お願い…

徳永直の初日給

これもまたなかなかお目にかかれない、徳永直『はたらく歴史』ば借覧(福島県立図書館)。書き出しはかうだ。 民治がはじめて印刷工場に入つたのは明治四十三年の十二月であつた。七歳あがりの尋常六年生だつたから、彼は十二歳で、まだ三學期がまるまる殘つて…

Furniture = ホルニチュールの件

以前「ホルニチュール鋳造機械」って何だらう? って疑問を持ったことにつき、twitterで「Furniture」のことぢゃないかとお教えいただいてたんだども。 明治三十一年の『活版術捷径』が、正にその通りのことを書いてゐたと気づいたのでメモ。

イースト「人名外字PROV4」の変体仮名

XKPのKanjiLinkサービス運用実績を反映したといふ、 イースト株式会社「人名外字PROV4」の収録変体仮名一覧。 数え間違ひでなければ、濁音・半濁音を除いて二百一の変体仮名グリフが収録されてゐる。 その名の通り「人名外字PRO」であるからこの二百一字は「…

TRONの「住基仮名70番」字母対応が間違ってる件

超漢字Vを使って、TRON文字登録センターによる「住民基本台帳収録変体仮名」の全グリフに該当するだらう文字符号について文字属性をチェックしてみて、「住基仮名54番」楚の件の他にもうひとつ気づいた間違ひがある。 下記9面8356「楚」(赤丸印)の真下にある…

TRONの「住基仮名54番」は平仮名の対応が間違ってるんぢゃないか?

さて、己は住民基本台帳を触るような者ぢゃないので詳細は不明といふ前提なんだども。 先日の日記さ記した、TRON文字登録センターによる「住民基本台帳収録変体仮名」の全てのグリフについて、超漢字Vの文字検索小物で文字属性をチェックしてみて気づいたこ…

築地活版『新調三號和文假名文字體鑑』の変体仮名を読んでみる

総数見本ではないので網羅的では無いんだらうけれど。「活字変体仮名」のことを詳しく知りたく思ふ己には色々と興味深いので、東京築地活版製造所『新調三號和文假名文字體鑑』を読んでみる。 ○ごぬだの なほすけうし の うた やすみしし わがおほぎみの み…

超漢字V(BTRON)の住基仮名と変体仮名

まだ3分しか触ってゐないので誤解があるかもしれねえんだども。 超漢字V(BTRON)の「文字検索」で住基仮名の一覧を開いてみたらば。 ものの見事にグリフが見えない仕様になってゐる。 とはいへ各々の文字の属性はTRON仕様で設定されてゐて、「T298321」といふ…

丸善の支那叢報第二回予約締め切りはいつだったんだろう

丸善は昭和十六年九月の『学燈』で岩井大慧による「支那叢報」複刻・解説などの特集を組み、十月には大手の新聞や『図書館雑誌』などに「限定五百部」予約募集の広告を出してゐる。この昭和十六年十月三十一日締め切りの予約は第一回だったんだらうか。第二…

徳永直『輜重隊よ前へ』(昭六刊)表紙に描かれた関消連の旗

過日記した「徳永直の共働印刷生産組合」の記事中で言及した、JCCU協同組合塾さんのサイトに、「関消連の旗に使われていたCO-OPマークをめぐって調べたこと」といふMさん発の記事がある。 同記事によると、関東消費連盟の旗印は、あの橋浦泰雄が昭和三年もし…

石倉千代子『野の草』が記す新鋳活字の手触り

徳永直と同時期に博文館(共同印刷)で働いてゐた石倉千代子の自伝『野の草 ある印刷女工の歩み』(日本婦人会議出版部、一九八一)、いつか読んでみっぺと思ってゐたんだども、オークションで入手することができた。 争議関連の箇所ではないんだども、往時の女…

徳永直の共働印刷生産組合

共同印刷争議に敗れた徳永直が、昭和二年頃、有志数人で小さな印刷工場を作ったといふ話が浦西和彦編『人物書誌大系 1 徳永直』の年譜に記されてゐて、そのやや具体的な内容が横山和雄『日本の出版印刷労働運動』(一九九八、出版ニュース社)五八三頁に書かれ…

三谷幸吉が最初に勤めた福井の印刷所を推定する

しつこく再掲するんだども、三谷幸吉『印刷料金の實際』(昭和二年、印刷改造社)第七章「印刷工の性質」一九〜二〇頁には、三谷が最初に勤めた印刷所について、かう書かれてゐる。 自分本意で申す譯ないが手近かな處から申上げるのでありますが、私が初めて印…

マンガ雑誌の樹脂版

写研『QT』64号(1985年6月)には、毎週四百万部を出してゐた頃の『少年ジャンプ』の印刷について、かういふ話が載ってゐた。 印刷は紙のコストの関係から活版輪転機が用いられるが、現在ここで使われているのは樹脂版。以前の亜鉛版では重くて輪転機の回転数…

コマ割り絵本と絵物語のアンチゴチ

コマ割りマンガとアンチゴチのなれそめの頃を探していくうちに、大正から昭和戦前期にかけての、絵本とマンガの中間的な存在が今のマンガにつながる貴重な存在だったと思はれてくる。 例へば国立国会図書館国際子ども図書館の絵本ギャラリーにある 『コドモ…

マンガのノセ文字

さて、『アイデア』336号(asin:B002HESMNE)で言及した、島本和彦『炎の転校生』(『週刊少年サンデー』1985年40号)の図版なんだども: この「出た! 暗黒流れ星!!」といふ必殺技の名称に見られるような文字の刷り方を、「スミノセ」文字と呼ぶことを、美術出版…

写植でネガ印字(黒地に白文字)ってアリなんだべか

写真植字機の入門書類を見る限り、写真植字機は白い印画紙に黒い文字を印字することになるものであるらしいんだども、ひとつ疑問に思ふことがある。 松本零士『銀河鉄道999』の第一巻から、少年画報社ヒット・コミックス版第一巻の表題でもある、「タイタン…

ジャイアントロボの「ま゛」

教科書的な現代日本文には出現しない、「あ゛」「い゛」「う゛」「え゛」「お゛」など濁点つきの仮名文字。その一バリエーションに、「ま゛」といふパターンがあり、横山光輝原作のSFロボット特撮『ジャイアントロボ』が発する声を表すものとして定着してゐ…

公団ゴシックの退化と新しい標識書体について

NEXCOが道路標識に使う書体を道路公団標準文字(公団ゴシック・JHゴシック)からヒラギノに変えるという話題に対して、NEXCO中日本が行った新旧書体の実証実験が看板文字サイズの変更をも伴ふ試験だったため、旧書体のままサイズ変更のみの試験をなぜやらなか…

明治二十年頃の築地活版に勤めたらしい山室軍平

今まで全く気づいてゐねがったんだども。「明治・大正・昭和前期の社会事業家・宗教家であり、救世軍(Salvation Army)の日本司令官として免囚保護、廃娼運動、日露戦争後の不況対策としての労働紹介所の設置、結核患者を収容するサナトリウムの開設、凶作…

三谷幸吉『印刷料金の実際』メモ

三谷幸吉自身が断片的にせよバイオグラフィを記したものと思はれた『印刷料金の實際』(昭和二年、印刷改造社)なんだども、己が知る限り、国会図書館の「禁複写」本と、中央区立図書館の別置書庫のもの、そして印刷図書館里帰り本の、三点が国内に存在する模…

スーパー学参フォント

公有フォントづくりに挫折した後、M+フォントの進捗に深く感動しつつ、どんな企画なら自分自身再び立ち向かえっぺか考えたことがある。 その際に、現在流行中のUDとは違う意味でのユニバーサルフォント、教科書限定にしておくのは惜しいからあちこちで使おう…

山岡荘八の博文館印刷所勤務時代

講談社の『山岡荘八全集36「短編名作集」』(asin:4061291963)巻末に山岡荘八の詳細な年譜がついてゐるんだども、大正十年(一九二一)の項に、かういふ記述がある。 この年冬上京。翌十一年へかけ母がたの親戚である博文館印刷所につとめた。自伝に、文選の熟…

中原中也井上靖火野葦平・山岡荘八・高見順宮本常一

彼らは全員明治四十年(一九〇七)生まれ。