日本語練習虫

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〈『カムイ伝』の「印刷原版」〉としてネットオークションに出ていた例のブツは小島剛夕『秘剣影流し』(芳文社「長編コミック傑作集2」、1968.9)の亜鉛版だった模様

2025年8月29日付「〈『カムイ伝』の「印刷原版」〉としてネットオークションに出ていた小島剛夕『土忍記』亜鉛版の素性が知りたい話」に対して、『コミックmagazine』での初出掲載からほどなくして編まれた作家別(作品別)「長編コミック傑作集」の版なのではないかというコメントを頂戴し(ゆめのさかえ様、ありがとうございます)、さっそく日本の古本屋経由で入手してみました。

小島剛夕『秘剣影流し』(芳文社「長編コミック傑作集2」)オモテ表紙

この記事のタイトルは当該書の背文字の塩梅に従って「小島剛夕『秘剣影流し』」としておきましたが、奥付の表記に従えば題名は『土忍記 / 秘剣陰流し』になるようです――という点を、検索の便も考慮して記載しておきます――。昭和431968年9月21日発行、発行者:孝寿芳春・発行所:芳文社・印刷所:光邦印刷。

小島剛夕『秘剣影流し』(芳文社「長編コミック傑作集2」)ウラ表紙

第1話「陰に棲む者」の冒頭16ページ分(当該書3~18ページ)だけが(おそらく初出誌と同じ)2色カラー印刷で、残りはモノクロ印刷。そして例の亜鉛版裏面に赤ペンで記された数字と、『秘剣影流し』のノンブルは4点とも合致していました。

小島剛夕『秘剣影流し』(芳文社「長編コミック傑作集2」)134頁と亜鉛版134番
小島剛夕『秘剣影流し』(芳文社「長編コミック傑作集2」)154頁と亜鉛版154番

カラー原稿からモノクロ版に起こされた際に調整されたアミ点の具合も合致しているようです。

小島剛夕『秘剣影流し』(芳文社「長編コミック傑作集2」)133頁と亜鉛版133番
小島剛夕『秘剣影流し』(芳文社「長編コミック傑作集2」)133頁と亜鉛版133番(部分)
小島剛夕『秘剣影流し』(芳文社「長編コミック傑作集2」)153頁と亜鉛版153番
小島剛夕『秘剣影流し』(芳文社「長編コミック傑作集2」)153頁と亜鉛版153番(部分)

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さて、改めて、この亜鉛版はどういう版なのでしょう。

小島剛夕先生によるオリジナル原稿から写真製版によって得られた「マンガ本文」をモノクロ印刷するための亜鉛版――というところまでは間違いないところであるように思われます。

前掲画像に見える通り、当該書は「マンガ本文」の天マージン小口側にノンブルが振られており、また見開きのうち左ページにのみ各話タイトルを示す柱があります。

ここから先は想像の話なのですが、芳文社「長編コミック傑作集」の本番印刷までの工程として。

  1. 「マンガ本文」をモノクロ印刷するための亜鉛版(仮称「本文原版」)を作成
  2. 「本文原版」をアルミベースに貼付し、活字を拾ってノンブルや柱を組み付け、校正刷り用の版を作成
  3. 校了した版を本番印刷の割り付けに合わせて8ページ分組み合わせる
  4. 8ページ分の紙型を取る
  5. 紙型から輪転機用の(曲がった)鉛版を作成

最初の印刷まではこのような段取りで進行し、増刷の際は「本文原版」が作成済みである段階から改めて進む。――という具合だったために小島剛夕『秘剣影流し』(芳文社「長編コミック傑作集2」)の「本文原版」が残されていたのではないか。

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この亜鉛版は、いったいどういう版なのでしょうか。ご存じの方、あるいは予想が立つ方がいらしたら、ぜひご教示ください。