昨秋から今年の初めにかけて、近代デジタルライブラリーで公開中の、明治二十一年から三十一年のNDC9類資料を見直していた。
作業中に気づいた江川行書多用資料を、以下に抜き書きておく。見落としでなければ、明治二十四年以前には用例がない。
- 明治二十五年
- 徒然草文段抄 : 校註自序(印刷:大阪/瀬戸清次郎)
- 俳諧歳時記栞草. 春・夏の部序文(印刷:東京/東京築地活版製造所)
- むらすずめはしがき(印刷:大阪/山口恒七)
- 明治二十六年
- 仇しの夢序文(印刷:大阪/大垣弥太郎)
- 野狐三次. 前序文(印刷:大阪/山口貞二郎)
- 函嶺の夢序文(印刷:甲府/内藤活版製造所)
- 深見くさ : 小説序文(印刷:大阪/大原政吉)
- 明治新撰風俳冠吟五千集序文(印刷:大阪/前野茂久次)
- 明治二十七年
- 雲井詩集本文(印刷:米沢/須佐権平)
- 明治二十九年
- 女曽我 : 復讐美談序文(印刷:東京/山本新吉)
- 是空俳話はしがき(印刷:津山/仁科久造)
- 箱根権現躄仇討序文(印刷:東京/大嶋寛治)
- 孤児 : 英国実話本文・五号(印刷:東京/瀧川三代太郎)
- 文覚実伝 : 遠藤武者盛遠序文/本文(印刷:東京/「行書専門」大島活版所/横田磯吉)
- 大和三傑士見出し/本文(印刷:東京/横田磯吉)
- 明治三十年
- 俳学大成. 第1,2巻序文/本文(印刷:東京/大島寛治)
- 明治実話毒婦お民はしがき(印刷:東京/大島寛治)
- やまと姫序文(印刷:東京/菅北乾之助)
- 明治三十一年
- 沖田双子仇討はしがき(印刷:東京/大島寛治)
- 義侠白藤源太はしがき(印刷:東京/大成館/吉田栄治)
明治二十九〜三十一年に登場する大島活版あるいは大島寛治は、先日言及した、『聚珍録』掲載資料の印刷者である。上記の通り自ら「行書専門」と謳った奥付もあるのだが、この期間の近デジ資料を見る限り、実際には明朝活字用例の方が多い。
なお、本文頁の題字にだけ江川行書が使われる――といった用例は、除外した。明治二十八年については、題字用例しか見ていない。
そうした部分用例の例外として、仙台市大町三丁目所在となっている「菱伊活版所」の名義表記(明治二十七年「才子佳人」のみ、《仙台支店》の記録として、リンクしておく。)