さて、1880-90年代に日本で発行された活字見本帳に掲載されている絵文字の類――emojiなのかsymbolなのかpictographなのか厳密な線引きは考えないことにします――に、「👁」(メコマ)と「☞」(index/manicule)がありました。
「☞」は『明治十五年第七月改正 西洋文字各種類見本』(1882年、東京築地貮丁目拾七番地 築地活版製造所、印刷図書館蔵)に掲載されている、海外製活字の複製品または倣製品なのではないかと思われるMINION (Roman)活字セットの見本に含まれています。
明治36年に内国博覧会名誉銀杯を記念して発行された『活版見本』(1903年、東京築地活版製造所、国会図書館デジタルコレクション)では、活字としてのINDEX(https://dl.ndl.go.jp/pid/854017/1/146)の他、精細なイラストがelectrotype(電気版)として多数掲載されています(https://dl.ndl.go.jp/pid/854017/1/186)。
実用例として、広告類に電気版が使われているもの以外、日本語テキストと同時にINDEX活字が使われているものは、今ちょっと思い浮かべることができません。実用例が思い浮かぶ方、ぜひお教えください。
「👁」は、mashabow氏がflickrで公開してくださっている『二號明朝活字書體見本 全』(1893年、東京築地活版製造所、https://www.flickr.com/photos/95996414@N02/albums/72157662791750695)の「印物」(https://www.flickr.com/photos/95996414@N02/23854153892/in/album-72157662791750695/)や、明治27年6月改正『五號明朝活字書體見本 全』の「印物」(1894年、東京築地活版製造所、現在横浜市歴史博物館小宮山文庫蔵、大日本スクリーン製造のウェブサイト「タイポグラフィの世界」での小宮山博史「書体の復刻/築地体前期五号仮名」〈https://www.screen.co.jp/ga_product/sento/pro/typography/05typo/05_6typo.html〉の図9の3〈https://www.screen.co.jp/ga_product/sento/pro/typography/05typo/05typo_img/093.jpg〉)に見えています。後者の活字見本で「👁」に「メコマ」とフリガナが付されているので、その呼び名を採っておきました。
実用例として印象に残っているものに、後に江川活版製造所を興す江川次之進が明治18年に出していた新聞広告で「新発明」を二号活字で「新発👁」と表現しているもの(https://uakira.hateblo.jp/entries/2012/04/23)の他、ブックデザイナの祖父江慎さんが2016年に紹介していらした(https://twitter.com/sobsin/status/776780980866592769)明治16年『妙竹林話(みょうちくりんわ)七偏人(しちへんじん)』序文(#ndldigital https://dl.ndl.go.jp/pid/882517/1/4)における四号活字の例(お目出とう〈旧かなづかいで「お目出たう」〉を「お👁出たう」と記したもの)があります。
より古い時代の判じ絵(rebus)の頃から生き続けていた「👁」が、いつごろ活字セットから消えていったのか(あるいは生き延びていたのか)は、判りません。