以前言及したことがある「大阪都村活版製造所の考案になる草書活字」と思ってよいのであろう仮名活字一式もまた、青山進行堂『富多無可思』に掲載されています(70頁)。
江川活版製造所の五号行書仮名に続いて、こちらも津田房之助『女子用文五千題 巻下』(印刷:都村善平〈明治28年9月16日〉、発行:矢島誠進堂書店〈明治28年9月22日〉)を素材にして、活字見本を私製してみましょう。
なお、本文は家蔵本もNDL本も特に違いは無さそうに思えますが、家蔵本の奥付をNDL本の奥付(https://dl.ndl.go.jp/pid/866852/1/43)と比べてみると、NDL本の発行日は一部空欄の箇所に手書き、家蔵本の発行日はすべて二号草書活字で印刷、という違いが見られます。
また題箋は失われ色落ちしているものの元の表紙が残っており、NDL本には無い楽しみがあるのですが、それはまた別の話。
カタカナは『富多無可思』にそのまま引き継がれているようですが、ひらがなの多くの違いがどういう事情によるものか、追加の検討が必要である模様。
以下2024年12月31日追記:
東京築地活版製造所の五号楷書ひらがなを纏めてみた結果、どうやら『富多無可思』の五号草書平仮名は都村草書をベースに築地楷書の「あ」「き」「な」等をブレンドした文字セットだったと判明した感じ。