仮称「都式活字」A型仮名
仮称「都式活字」A型仮名は、『都の華』52号〈
仮名セットだけを見ていると特徴的な「あ」「な」「も」「る」等に目を奪われてしまいますが、「中央新聞が明治38年に本文活字として採用した東京築地活版製造所の9ポイント明朝活字」が従来の前期五号や後期五号の書風とだいぶ離れたものになっていることと比べると、これ以前の『都新聞』が本文に用いていた築地前期五号書風のスタイルを本家よりも濃く受け継いでいると感じられます。
仮称「都式活字」B型仮名
仮称「都式活字」B型仮名は、『都の華』56号〈
一見すると「築地体後期五号書風」だと感じられますが、
明治末から大正半ばの新聞を見慣れた方にとっては、仮称「都式活字」B型仮名が、都式活字の姿として定着しているのではないかと思います。
仮称「都式活字」ABブレンド型仮名
仮称「都式活字」ABブレンド型仮名は、松藤善勝堂が1910年代に自ら手がけた印刷物に見られます。
国会図書館デジタルコレクションをキーワード「松藤善勝」で官報と雑誌を対象として検索して得たリストを見ていたら、「印刷所松藤善勝堂」という並びになっている資料がありました。開いてみると、松藤善勝堂が自ら印刷した「都式活字」の用例だったことが判り、驚きました。
「印刷所松藤善勝堂」となっているのは、
改めて全資料を対象にして「松藤善勝堂」で検索していくと、次の2点が見つかりました。
- 小久保喜七『城南片鱗』(大正2、楽山堂書房〈https://dl.ndl.go.jp/pid/951785/1/208〉)
- 赤堀峯吉・赤堀菊子『飯百珍料理』(大正2、朝香屋書店〈https://dl.ndl.go.jp/pid/981111/1/111〉)
本文を見ると、『小波身上噺』と同じ、仮称「都式活字」ABブレンド型仮名で印刷されています。
10年前の
⿴囗図デコの『小波身上噺』は奥付が欠けている https://t.co/PTcr2h2kUx ので確定的には言えないのだけれど、⿴囗図デコ本と、近代書誌・近代画像データベースが掲げる山梨大学附属図書館・近代文学文庫本 https://t.co/jf8t2EwL7t が同じ本で☞
— UCHIDA Akira (@uakira2) December 15, 2015
また、「都式六号活字」の実用例であると思われる夏目漱石『鶉籠 虞美人草』国会図書館蔵本は64版ということなので(https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I033365238)、「製版」担当者であった松藤善勝堂の名が奥付から消えています。そのため国会図書館デジタルコレクションをキーワード「松藤善勝堂」で全文検索しても、拾われることはありません。
報知新聞に使われている都式活字
『新聞総覧』では本文活字を「報知式五號」と称していた『報知新聞』ですが(明治44年版:https://dl.ndl.go.jp/pid/897420/1/13、大正2年版:https://dl.ndl.go.jp/pid/2390577/1/15)、『印刷雑誌』
少なくとも手元にある大正3年8月23日付『報知新聞』は、今回の分類で言うところの仮称「都式活字」ABブレンド型仮名で印刷されています。
新見ぬゑ(@nue213)さんによる2015年7月8日付
また、他紙の状況も現時点では全く不明と言うほか無く、この記事での整理を足掛かりにして調査の網を広げてくださる方がいらしたら、ぜひお知らせくださいますよう、お願いいたします。