日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

幻のMS明朝ver.3.00互換フォント

MS明朝ver.3.00といふ幻のフォントのことについて思ふところを記すため、「フォントの互換性」について、ちょっとだけ考へてみた。

まず、文字セットの互換性。
Windows独自の外字とか、Mac OS独自の外字とか、まぁ、さういふ文字があって、JIS X 0208の文字は相互運用可能だども外字領域には互換性が無い――といふことが、かつてあった。たぶん今でもある。また、実装水準三のフォントと四のフォントでは含まれる文字数が異なる――文字数の違ひならAJ4のフォントとAJ5のフォントなどと言ってもよい――といった話もあらう。

点画構成の互換性(といふ表現が適当かどうか)。
部分字体の「次」の最初の二画をどう表現するか――みたいなことに関する考へ方の一致・不一致の問題。JIS X 0208の文字セットとJIS X 0212の文字セットを実装するフォントだったモノが、JIS X 0208と0212と0213を実装するフォントに変身する際、0212の規格票と0213の規格票で異なる字形で例示されることとなった0221符号位置をどんな具体字形にするか(したか)といった話や、0213:2000と0213:2004の違ひなどにも関連するだらう。

ウエイトの互換性。
HeavyとかBoldとかLightといったものや、W7、W5、W3といった数値に、絶対的な基準は無い。あるフォントセットに合はせて開発された「置き換え仮名フォント」といったことや、あるOSのデフォルトのフォントで作ったテキストを別のOSのデフォルトフォントで見た場合に黒味の印象が激しく異なったりしないかどうかといったことに関係するだらう。

文字組み設定の互換性(と仮に言っておく)。
MSゴシックとモナーHelveticaとArialなど、別のフォントに切り替えてもレイアウトが崩れない――といった目的を達成する互換性の件。

書風の互換性。
新規に別個に開発された書体が偶然の一致で似通ってしまったり、他のマテリアルで人気のある他社の書体に敢て似せて電子活字を作ってみたり。

グリフ形状の互換性。
OEM等の兼ね合ひで違ふ名を持つフォントが同じ字母から作られてゐるなど。この場合、グリフデータが完全に一致する場合と、なぜかレンダリング結果は合致するのにグリフデータが合致しない場合があり得る。

――とまぁ、無い頭で考へておいたわけなんだども。
つまるところ、文化審議会国語分科会漢字小委員会が使っているMS明朝(乃至互換フォント)についての考へ方として。
そいつは「幻のMS明朝ver3.00」ぢゃなくて、その「幻のMS明朝ver3.00」と上記すべての点において完全互換だったり少なくとも安岡先生が注目されてゐるキャラクターについては同一性があるような、正式にWindows Vistaとして発表される前のMSDN限定ベータ1とか公開ベータ2などに含まれてゐた版のMS明朝であるとか、あるひはMS明朝互換フォントとして売り出されStar Suite等にHG明朝L-Sunといった名でバンドルされてゐるフォントだったりする方が可能性が高いんぢゃないか――といふことを言ひたいのだった。
Star Suite 8付属のHG明朝L-Sunは己も持ってるんだども、これでは無さげ。