日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

1920年代前半の新聞における本文系ポイント活字書体の変遷(暫定版)

2年程前の記事「大正中期の新聞における本文系ポイント活字書体の変遷(暫定版)」は記事中にもある通り「年末に刊行される予定の雑誌に向けて執筆中の原稿」、つまり勉誠出版から2022年12月付で刊行された『書物学』第21巻「特集 活字」に掲載していただいた〈「秀英電胎八ポ」書風と「築地新刻電胎八ポ」書風の活字について〉の予備的な作業として手掛けたものでした(参照:「六号雑記」)。

今回は大正後期(≒1920年代前半)の本文書体を追っていき、8ポ・7ポ75から7ポ半への変化を捉えることができるのかどうかに迫ってみたいと思います。

毎日新聞七十年』(1952)614-617頁「建㌻・活字・定価変遷表」に記されている(大阪毎日新聞の)資料によると、大正7年7月から12月まで8ポイント(16字詰め11段組)だった本文活字は、大正8年1月1日から7ポ75(15字詰め12段組)となり、更に大正11年4月4日から昭和3年3月まで7ポ半(15字詰め12段組)だとされています(NDL:https://dl.ndl.go.jp/pid/2934030/1/329

7ポ75期の活字は〈「秀英電胎八ポ」書風と「築地新刻電胎八ポ」書風の活字について〉(『書物学』第21巻 https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=101347)52頁の図7(大正9年2月20日付大毎)をご覧いただくこととし、参考に7ポ半の紙面を掲げておきます。

大正12年1月18日付『大阪毎日新聞』夕刊(1月19日発行)1面(部分)

7ポ75期の本文活字は「築地新刻電胎八ポ」書風で、7ポ半は「秀英電胎八ポ」書風であるように見えますが、『毎日新聞七十年』207-208頁「邦文モノタイプと活字の自家鋳造」によると、大阪毎日新聞社では大正10年に日本タイプライターの前身である日本写字機紹介から邦文モノタイプの試作機を導入し「次いで十一年の初め七台を買入れた。活字自家鋳造の最初であった」ということでhttps://dl.ndl.go.jp/pid/2934030/1/125、「秀英電胎八ポ」書風である7ポ半活字は日本タイプライターの秀英書風母型で自家鋳造された可能性が高いのではないかと思われます。

以下、「大正中期の変遷」と同様に神戸大学附属図書館デジタルアーカイブ新聞記事文庫でおよその傾向をつかめるのではないかと期待して探ってみたのですが、肝心の大正11年以降の期間で一部資料の欠落が大きく、微妙な調査結果となってしまいました。

年月大阪毎日東京日日大阪朝日東京朝日中外商業時事新報報知新聞読売新聞萬朝報国民新聞
1920大9年3月 築7.75 *1 築7.75 *2 築地風 *3 秀英風 *4 築8ポ? *5 秀8ポ? *6 秀8ポ? *7 秀8ポ? *8 秀8ポ *9 築8ポ? *10
1920大9年9月 築7.75 *11 築7.75 *12 築地風 *13 秀英風 *14 築8ポ? *15 築地7.75? *16 秀8ポ? *17 秀8ポ? *18 秀8ポ *19 築8ポ? *20
1921大10年3月 築7.75 *21 築7.75 *22 築地風 *23 秀英風 *24 築8ポ? *25 築地7.75? *26 秀8ポ? *27 秀8ポ? *28 秀8ポ *29 築8ポ? *30
1921大10年9月 築7.75 *31 築7.75 *32 築地風 *33 秀英風 *34 築8ポ? *35 築地7.75? *36 秀8ポ? *37 秀8ポ? *38 秀8ポ *39 築8ポ? *40
1922大11年3月 築7.75 *41 築7.75 *42 折衷型? *43 秀英風 *44 築8ポ? *45 築地7.75? *46 秀7.5? *47 N/A N/A 築8ポ? *48
1922大11年9月 秀7.5? *49 秀7.5? *50 折衷型? *51 秀英風 *52 築8ポ? *53 築地7.75? *54 N/A N/A 秀7.5? *55 築8ポ? *56
1923大12年3月 秀7.5? *57 N/A 折衷型? *58 秀英風 *59 築8ポ? *60 築地7.75? *61 N/A N/A N/A 築8ポ? *62
1923大12年9月 秀7.5? *63 N/A 折衷型? *64 折衷型? *65 築8ポ? *66 秀7.5? *67 N/A N/A N/A 築9ポ? *68
1924大13年3月 秀7.5? *69 N/A 折衷型? *70 折衷型? *71 秀7.5? *72 折衷型? *73 N/A N/A N/A 折衷型? *74
1924大13年9月 秀7.5? *75 N/A 折衷型? *76 折衷型? *77 秀7.5? *78 折衷型? *79 N/A N/A N/A 築8ポ? *80

*1:大阪毎日新聞 1920.3.26「輸入為替制限

*2:東京日日新聞 1920.3.22「貨物等級改正

*3:大阪朝日新聞 1920.3.20「浦潮政府の命数 (上・下)

*4:東京朝日新聞 1920.3.3「北京政局動揺

*5:中外商業新報 1920.3.3「北京政局動揺

*6:時事新報 1920.3.4「同盟改訂如何(英国人の所見)

*7:報知新聞 1920.3.2「社会主義の中心が大阪に移る

*8:読売新聞 1920.3.10「満蒙に関する新軍事協定

*9:万朝報 1920.3.12「太平洋の平和

*10:国民新聞 1920.3.9「綿糸調節未定

*11:大阪毎日新聞 1920.9.23「対米廟議決定 : 排日問題解決方法

*12:東京日日新聞 1920.9.4「我が海運策に対する米人の誤解

*13:大阪朝日新聞 1920.9.8「膠着した五倉庫の貨物とビクとも動かぬ三億の貸付金

*14:東京朝日新聞 1920.9.9「糖界混乱内情

*15:中外商業新報 1920.9.10「生糸市場安定策

*16:時事新報 1920.9.9「十五万人を抱擁する逓信省の大組合

*17:報知新聞 1920.9.20「活字の大小はどの限度に

*18:読売新聞 1920.9.7「加州の排日問題

*19:万朝報 1920.9.19「日本の小児の出産率と死亡率

*20:国民新聞 1920.9.「第三次国際労働総会議案

*21:大阪毎日新聞 1921.3.5「銀行又警戒し始む

*22:東京日日新聞 1921.3.20「セ軍の五百万円日本金貨となる

*23:大阪朝日新聞 1921.3.27「神戸印刷工場組合の印刷会社企業内容

*24:東京朝日新聞 1921.3.27「愈握潰=取引所法

*25:中外商業新報 1921.3.29「独逸海運界の現状

*26:時事新報 1921.3.26「広告的外国商品の襲来に不当廉売を取締る

*27:報知新聞 1921.3.11「商大の入学=志願が半減した

*28:読売新聞 1921.3.26「日本の南洋統治に纏わる流言浮説

*29:万朝報 1921.3.9「労働運動の変化

*30:国民新聞 1921.3.22「労働党の台頭と英国政界の将来

*31:大阪毎日新聞 1921.9.1「航空界の革新は量よりも質の問題

*32:東京日日新聞 1921.9.10「米国にも大本教に似た覆面黒衣の結社

*33:大阪朝日新聞 1921.9.7「失業保険法に就て

*34:東京朝日新聞 1921.9.16「小作争議の用意

*35:中外商業新報 1921.9.5「労農政府と共産主義

*36:時事新報 1921.9.18「国際交易所の重役告訴さる

*37:報知新聞 1921.9.16「蚕糸業界の革命時期

*38:読売新聞 1921.9.14「同じ趣味思想で理想郷の建設

*39:万朝報 1921.9.19「欧洲の道路 日本とは雲泥の違い

*40:国民新聞 1921.9.21「人種案は提出せず

*41:大阪毎日新聞 1922.3.31「岸和田の市制実施は多分六月頃であろう

*42:東京日日新聞 1922.3.31「各府県産業状態と平和博の設備

*43:大阪朝日新聞 1922.3.「人を喰った張作霖

*44:東京朝日新聞 1922.3.10「昇格予算総会

*45:中外商業新報 1922.3.25「製紙操短愈撤廃決定

*46:時事新報 1922.3.24「貿易転換容易ならず

*47:報知新聞 1922.3.23「膝詰談判を始めた官業労働代表

*48:国民新聞 1922.3.29「朝鮮人が著る桐生製の織物

*49:大阪毎日新聞 1922.9.1「日露会議は四日開会に決定

*50:東京日日新聞 1922.9.7「愈々窮した米国船舶院

*51:大阪朝日新聞 1922.9.7「満蒙貿易と広島県航路補助問題

*52:東京朝日新聞 1922.9.10「金解禁に衆議決す

*53:中外商業新報 1922.9.1「コール日歩暴騰事情

*54:時事新報 1922.9.20「露国側の策戦と宣伝

*55:万朝報 1922.9.26「文部当局無経綸

*56:国民新聞 1922.9.23「三帝大総長会合

*57:大阪毎日新聞 1923.3.31「パナマ運河の防備に関する安、不安の両説

*58:大阪朝日新聞 1923.3.29「サンチャゴ会議 (上・下)

*59:東京朝日新聞 1923.3.24「修正された瓦斯事業法案と憲革両派の態度

*60:中外商業新報 1923.3.24「満洲財界の整理に伴い注目さるる二問題

*61:時事新報 1923.3.31「図書館から見た世間の読書力

*62:国民新聞 1923.3.20「三大伏魔殿の一東拓の真相も遂に暴露

*63:大阪毎日新聞 1923.9.15「全欧洲に於ける政治的地震

*64:大阪朝日新聞 1923.9.3「大震災と経済界

*65:東京朝日新聞 1923.9.21「横浜市復興案

*66:中外商業新報 1923.9.26「明年度予算の編成方針と順序

*67:時事新報 1923.9.27「会議所震災対策決議

*68:国民新聞 1923.9.22「総ての道は羅馬への大環状道路建設

*69:大阪毎日新聞 1924.3.30「三十年後を想像して出来た神戸都市計画の輪廓

*70:大阪朝日新聞 1924.3.28「露国の対支回答

*71:東京朝日新聞 1924.3.22「東京都制内容

*72:中外商業新報 1924.3.「一千万盾に上らんとした瓜哇糖転売収益画餅に帰す

*73:時事新報 1924.3.15「日露正式交渉批判

*74:国民新聞 1924.3.21「火保金出捐に対する助成金支出の省令

*75:大阪毎日新聞 1924.9.1「大戦の責任無し

*76:大阪朝日新聞 1924.9.7「大株に大穴をあけた島内閣の総辞職

*77:東京朝日新聞 1924.9.14「私設鉄道出願傾向

*78:中外商業新報 1924.9.21「十四年度の歳入見積決定

*79:時事新報 1924.9.1「第五回国際連盟総会九月一日から開会

*80:国民新聞 1924.9.21「米国軍縮案