日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

書字行為の手前

しばらく前までは「5ちょうだい」と言って落書き帳にアラビア数字の5を書くようせがんでゐた野郎ッコなんだども、最近は同じ内容を「5書けてちょうだい」と要求するやうになった。
公園へ一緒に遊びにいった際走り疲れたか単に飽きたかした野郎ッコから、「おっきい8書けてちょうだい」だの「消防車書けてちょうだい」だのと、地面に字やら絵やらを描かされてゐる己だ。
そんな野郎ッコが、一昨日、皿にひょろりと置かれた1本のソバを見て「し!」と宣ふ。確かにそこに、「し」の形状で横たはるソバがあった。
昨晩は、一番小さいブロックと、一番長いブロック、中くらいのブロックを組み合わせたモノを「いち!」と言って己に見せる。確かにブロック体といふかタイプライター書体といふか、さういふ形状の「1」だ。
ブロックで作った「1」については、最初から「1」を作る意図があったのか、馬か何かを作るつもりで偶然「1に見えるカタチ」になったのかは定かでない。が、書字行為の2段階くらい手前に《抽象化された字形イメージ》あるひは《文字のイデア》とでも言ふものの獲得があり、その次の段階に「見立て」のチカラや「組み立て」のチカラ、更に「自分の手で文字の姿を再現していいんだ」という意識の獲得がある。と、そのやうに思はれたことだった。
「字を書く」ほどまでには指先の器用さが発達してゐない段階でも、実は既に「字の形を自ら組み立てる」能力を獲得してゐるんではねぇべかといふ気がするし、デジタル時計みてぇな字形が目につくよう仕向けておくとブロックで数字を作る遊びを始めるんでねぇかと思ったりもするが、さういふ実験のために野郎ッコと暮らしてゐるわけではねぇので検証は自粛。
文字や数字に限らなければ、だいぶ以前から、車だのロボットだのヘリコプターだのを組み立てて遊んではゐるのだった。
ところで、「字を書く」ことに極めて近い「字の形を組み立てる」行為について、とりわけ幼少期に獲得する能力として、何か特別な呼び名を与へて研究した人はゐたっけか。