文明が開化し日本各地に印刷業が成立し始めてから20年ほどが経過した明治半ば、様々な産業で同業者組合が結成されていく中で、印刷業の世界でも概ね都道府県を1つのまとまりとする同業組合が成立していった。
昭和戦前期や高度経済成長期、あるいはコールドタイプ化などの時代の節目に「〇周年」を迎えることとなった各地の印刷同業組合の多くが、記念事業として「〇〇印刷史」「××印刷文化史」といった記念誌を発行している。単なる組合の歴史を超え、大なり小なり地域の印刷史・印刷文化史を扱ったものになっている。
近世から出版の三都と呼ばれた京都(『京都印刷一千年史』)大阪(『大阪印刷百年史』)江戸(『京橋の印刷史』)のものは別格で、とりわけ“我々こそが近代日本の印刷業界を牽引してきたのだ”という自負とともに編纂された『京橋の印刷史』は、日本全体を扱う細かすぎる年表が整備されていることからか、近隣諸分野から参照されることが多い。
駿河版の静岡、木村嘉平の鹿児島、本木昌造の長崎、秋山佐蔵の多摩など、地域の印刷史に“つよつよ”のトピックを持つものは、当然それらを大きく扱っている。
北海道印刷工業組合50年史 | 三浦康著 | 北海道印刷工業組合 | 1993 |
青森県印刷史 | 青森県印刷工業組合 | 青森県印刷工業組合 | 1982 |
秋田県の印刷文化史 | 秋田県印刷工業組合編 | 秋田県印刷工業組合 | 1992 |
山形県印刷文化史 | 武田好吉編著 | 山形県印刷協同組合 | 1971 |
宮城の印刷史 | 宮城県印刷工業組合 | 宮城県印刷工業組合 | 1986 |
つれづれ印刷文化史 : 福島県の印刷事始め随想 | 今泉壮一 | 福島県印刷工業組合 | 1997 |
栃木県印刷史 | 栃木県印刷工業組合編 | 栃木県印刷工業組合 | 1981 |
茨城県印刷文化史 | 茨城県印刷工業組合編 | 茨城県印刷工業組合 | 1988 |
京橋の印刷史 | 東京都印刷工業組合京橋支部五十周年記念事業委員会編/牧治三郎著 | 東京都印刷工業組合京橋支部五十周年記念事業委員会 | 1972 |
多摩の印刷史 | 東京都印刷工業組合三多摩支部「多摩の印刷史」刊行会編 | 東京都印刷工業組合三多摩支部 | 1985 |
支部史・千代田の印刷 | 東京都印刷工業組合千代田支部編 | 東京都印刷工業組合千代田支部 | 1967 |
神奈川県印刷業史 | 神奈川県印刷工業組合神奈川県印刷工業史編集委員会編 | 神奈川県印刷工業組合 | 1991 |
静岡県印刷文化史 | 静岡県印刷文化史編集委員会編 | 静岡県印刷工業組合 | 1967 |
山梨の印刷史 | 山梨の印刷史編集委員会編 | 山梨県印刷工業組合 | 1987 |
長野県印刷文化史 | 長野県印刷工業組合編 | 長野県印刷工業組合 | 1997 |
石川県印刷史 | 石川県印刷工業組合編 | 石川県印刷工業組合 | 1968 |
富山県印刷史 | 富山県印刷工業組合編 | 富山県印刷工業組合 | 1981 |
名古屋印刷史 : 創立二十周年記念 | 愛知県印刷工業組合編 | 愛知県印刷工業組合 | 1979〈1940〉 |
京都印刷一千年史 | 京都印刷一千年史編集委員会編 | 京都府印刷工業協同組合 | 1970 |
近世大阪印刷史 | 多治比郁夫著 | 大阪府印刷工業組合 | 1984 |
大阪印刷百年史 | 大阪印刷百年史刊行会編 | 大阪府印刷工業組合 | 1984 |
東大阪の印刷史 | 三〇周年記念誌刊行委員会編 | 大印工東大阪支部 | 1984 |
兵庫県の印刷史 | 兵庫県印刷組合記念史委員会編 | 兵庫県印刷紙工品工業協同組合 | 1961 |
紀州印刷史 | 紀州印刷史編纂委員会編 | 和歌山県印刷工業組合 | 1991 |
鳥取県の印刷50年の歩み : 鳥取県印刷工業組合40年史 | 西上忠幸編 | 鳥取県印刷工業組合 | 1998 |
広島県印刷史 | 田村信三著 | 広島県印刷工業組合 | 1985 |
島根県印刷工業組合60年誌 : 島根県の印刷130年の歩み | 島根県印刷工業組合編 | 島根県印刷工業組合 | 2002 |
愛媛県の印刷史 | 愛媛県印刷工業組合編 | 愛媛県印刷工業組合 | 1983 |
長崎印刷百年史 | 田栗奎作著 | 長崎県印刷工業組合 | 1970 |
大分県印刷工業組合40年史 | 大分県印刷工業組合編 | 大分県印刷工業組合 | 1998 |
かごしま印刷史 | 高栁毅著 | 鹿児島県印刷工業組合 | 2003 |
おそらく遺漏も多いことと思う。この方面に関心のある方は、印刷図書館(分類検索>組合史・団体史)をご覧いただきたい。
なお、地域に根差した新聞社の社史においても、地域の印刷史・印刷文化史が描かれることがある。これは神奈川県立川崎図書館の守備範囲となろうか。