2018年の11月に「世界史の中の和文号数活字史」を脱稿し、我ながら今更かよと思いつつ歴史活字サイズの取扱について英語圏のbibliographerが積み重ねてきた議論を再確認してみているシリーズ。
今回は、Monotype社のType Drawing Dept.のDirectorだったJohn C. Tarrが『The Library』(1946-47年s5-I巻3-4号)に寄稿した2ページのレター「Measurement of Type」についてのメモ。
Philip Gaskell「Type Sizes in the Eighteenth Century」(1952-53)や、John Richardson Jr.「Correlated Type Sizes and Names for the Fifteenth through Twentieth Century」(1990)から、面白い(大事な)提案をしようとしていることは判るんだけど数字の扱いがねぇ……と言われてしまっていたものだ。
『The Library』s5-I巻3-4号249ページに掲げられている〈Tarr表〉は、次のようになっている(部分)。
パっと見て気になるのは、20行高を「Points」に換算した値の有効桁数の扱いは大丈夫なのか?というところ。
Tarrによる〈数字の扱い〉について表計算ソフトで検証してみると:
――いきなり20行高「49mm」から「1行あたりインチ」への換算を誤っている(そのためポイント換算も誤っている)だけでなく、「1行あたりインチ」からAnglo-American Pointへの換算においても、Tarr自身が本文に記した「one point = .138"」で計算しているところと、より適切な換算単位である「1アメリカン・ポイント≒0.1383インチ」で計算しているところが入り混じっているようだ。
これではTarr表は役立たずと言われてしまってもしょうがない。
せっかく、John C. Tarr『PRINTING TO-DAY』(Oxford University press 1944〈revised 1949〉)ではtypographical pointは0.1383インチまたは約72分の1インチだと書いているというのに……