ネットオークションに出ていた『栃木縣地租改正報告』(明治8年第1号~明治9年第4号合綴)を入手した。出品時の内容見本写真に、とても気になる箇所があったためだ。
手元に届いたものをスキャンした画像を示す。
オークションで掲載されていた画像でも、今回スキャンした1つ目の画像のように「磽确」の字が他の本文活字(築地体前期五号)よりも明らかに太字――後の角ゴシックに繋がるような繋がらないような――であることが読み取れたので、和文ゴシック体の発生に強い関心を持っている自分としては絶対に現物を見る必要がある、と判断した。
前掲画像の2点目は、A4ブックエッジスキャナFB2280Eによる600dpiでのスキャン画像原寸。参考に、Olympus TG-5の顕微鏡モードで撮影した画像も続けて以下に掲げておこう(2.0倍と4.0倍)。
おそらく鋳造活字ではなく木か金属の彫刻活字なのだろうとは思うものの、正体はよく判らない。明朝活字の書体と異なる書風であるのは、故意なのか、このようにしか彫れなかっただけなのか。栃木縣地租改正報告を手掛けた印刷者が彫ったものなのか、築地活版(平野活版)に注文して作らせたものなのか。この資料にしか見られない孤立用例なのか、あるいは同時期に他県でも作成されていた地租改正報告に類似または同一の用例が見つかるものなのか。
はてさてふむ……