日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

「け」と読むケヶはこれ丈ヶぢゃないよ

先日来「こ」「か」「が」と読むケヶのことば尋ねてみてゐるGoogle先生さ、「け」のケヶば尋ねてみっぺと思って、「丈ケは(丈ヶは)」「丈ケの(丈ヶの)」「丈ケでも(丈ヶでも)」「丈ケなら(丈ヶなら)」などと検索してみたんだども、見事に撃沈されてしまった。ほとんど用例が無い。
「け」のケヶは、これ丈ヶぢゃないので、色々試してみっぺ。

「分ヶ」の場合、現代のギャル文字用例が多数ヒットする中に、歌麿の「咲分ヶ言葉の花」があったり、杉田玄白が「何とぞ此ターフルアナトミア、──中略──通詞等の手をからず、読分ヶたきものなり。」と語ったりと、近世のギャル文字とでも言ふべき用例が混ざってゐることに気づく。
「欠ヶ」の場合、「半田市欠ヶ下町」(かけがした)のような例がある一方で、何々「字欠ヶ」(あざ・かけ)の例が幾つもあることに気づく。
「駆ヶ」「駈ヶ」になると、「馬駆ヶ場」などの地名用例が見つかる。
Google先生で数百ページとか数千ページとか数万ページとかヒットしそうな「け」と読むケヶの例、無ぇもんだべか。
さういふ例があったら、「ヶ」は「こ・か・がと読む文字」としても使はれかつ同時に「小書き片仮名ケ」でもあるんだよ、っていふ話でア・バオア・クーの決戦ば勝ち抜けると思ふ己*1

さて、間が悪いことに先週末から自宅PCが起動しなくなってしまったので開けなかった例のN-gramデータ「googlekelke.xls」*2を、MS Offce対応*3ネットカフェで開いてみて腰が抜けた己。
助数詞として「ケヶ月」「ケヶ国」「ケヶ所」「ケヶ条」「ケヶ村」「ケヶ年」を拾った他、すべて「が」と読むだらう地名用例のみを取り扱ってゐるらしく見えるんだども、上記「欠ヶ」「駆ヶ」などの用例が拾はれてゐないなど、ワザと間違って拾った例だらう「摩耶ケーブル線」以外には「け」と読むだらうケヶの例を全く拾ってゐないらしく見える。なぜだらう。「ヶ」が「小書きされた『け』と読むカタカナ」(文字通りの KATAKANA LETTER SMALL KE)として使はれる用例を集めたくなかったのか?
この他、「六ヶ敷」の用例を拾ってゐないなど、日本語のケヶを真面目に考える意思を持ったデータであるとは信じ難い。

あの芝野耕司先生が、かうした手抜きデータに基づいて「読み」派や「見たまま」派を説得しようとなさってゐたとは全く考へられない己。
これは実は、「見たまま」派からカウンター攻撃を引き出すために敢て蹴られた精度の低いロングボールなんぢゃないか。ホントは「見たまま」派が講演会の場で説得力のある反対意見を述べ、枠に行くシュートを撃ち返し、芝野先生を説得しちゃうといふ行為を通じて「読み」派を説得しなきゃならなかったんぢゃないのか。
どうして当日の戦ひの場でそれが為されなかったか!
先生の目につかないとこでかうして吠えてても意味無ぇんだよコンチクショウ!!

*1:たぶん、さういふ例に関して「読み」指針では「ヶ」ぢゃなく「ケ」で入力することと「ケは小書き」の注記をつけることば求めるんだらうけど。

*2:http://sites.google.com/site/shibano/aozora-bunko-kouen-shiryou

*3:ヘンなピボット集計のせいで、Kings Officeでは開けなかった。