日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

活字料理店

朗文堂『Vignette』、宮脇書店総本店には全く無く、ジュンク堂三宮店には直近のバックナンバーしか無かったんだども、大垣書店烏丸三条店に、なぜか平野富二没後百十年記念出版号が揃って置いてあった。07号板倉雅宣『活字東ヘ』にお目にかかるのは、文字展@smtの時に NADiff bis に並んで以来なので、四年半ぶり。
この『活字東ヘ――長崎活字のゆくえ』は、長崎から大阪、京都、横浜、東京と活動を広げていった本木昌造ゆかりの活版所の活動と所在を追ったもので、京都點林堂の明治末から平成始めまでの所在地である三條通柳馬場東入中之町十五番地を示した現代の住宅地図(同書36頁の図23)ば見ると、烏丸通から富小路通まで三条通を400〜500mほど東進すれば點林堂跡地*1に着くらしい。
――といふわけで当該地へ行ってみたところ、「和洋折衷の創作料理、町屋で楽しいお食事を・・・」といふコンセプトの料理店になってゐた。

嗚呼、PC活字が好きな人々なら上加茂神社北西あたり*2の郵便局に萌えつつ堀川通を南下し堀川紫明交差点付近の会社*3を拝んだり下立売通を東に入ってここに世界の文字が集まってゐる*4と悶えたりしながら飯を喰ひに来るのに違ひ無ぇ。すごく古い活字とちょっと古い活字が好きなら総合資料館で嵯峨本を拝んだり古書店街を冷やかしてみたりしつつ飯を喰ひに来るのに違ひ無ぇ。
莫迦な妄想を抱きつつ店頭のメニューを見たら、普通に山野菜肉魚米穀類を旨そうに調理したらしいコース料理が3000円とあった。既に眠りに就きたい時刻に出かけてしまったので店内に入らなかった己は、そこが活字好きの集会所なのかどうかを確認せずにホテルに帰ってしまった。
ちなみに、『填字初歩』(點林堂の所在に関する記述は無い)と同じ明治十年に點林堂から出された『官令節略』(第一号、国会図書館蔵)によると、印刷所または出版社としての點林堂は、『活字東ヘ』の記述とは異なり、かなり早い時期から「西京三條通柳馬場東ヘ入中之町五番地」に(も)あった可能性がある。


2021年11月13日、「點林堂跡地」と「上加茂神社北西あたり」、「堀川紫明交差点付近の会社」、「ここに世界の文字が集まってゐる」のリンクテキストが示していたGoogleマップのURLを更新しました。