日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

筆記以前の書字行為

木の枝や石器などをも含む、広い意味での筆記用具、それらを使はないで書かれるあるひは描かれる文字。さうした文字を書くあるひは描く行為について。
さて、 http://d.hatena.ne.jp/uakira/20060617http://d.hatena.ne.jp/uakira/20060726 など、ここしばらくウチの野郎ッコの書字行為ば観察してゐる己なんだども。
先月ミカンを房毎に取り分けてやってゐだっけ、ひとつ手に持ったまま口に入れずに「ミカンふたつちょうだい」と言ふので次の房ば手渡したっけ、円弧ば外に向けて上下さ並べたミカンの房ば己さ見せて「こ」と宣ふのだった。確かに「こ」だ。己が見てゐる範囲で、野郎ッコが始めて平仮名ば「作って」みせてけだ瞬間だ。次に円弧を上にして左右に並べた房ば指差して「ニコニコ笑ってる」と言ふ。のみならず、「ミカンもっとちょうだい」とせがんで何をするかと観てだっけ、「ニコニコ」の下さ円弧ば下にした房を置いて「お口も笑ってる」と。絵筆に拠らず、跡も遺さない絵画ば作って見せてけだ。
文化の日、2歳9ヶ月半になる野郎ッコは、公園の地面さ右手人差し指で、大きな「5」ば描いてみせてけだ。続いて「1」と「6」。
まだ木の枝やクレヨンなどでは円弧の往復や楕円の渦巻きくらいしか描けない野郎ッコなんだども、腕全体あるひは体全体の運動能力は「数字のカタチ」を追ふのに十分なだけの成長を遂げ、ここにアラビア数字の書き取りとして結実したらしい。
かなりまともな「5」を描いた後、別の場所に移動して、「5」の横棒を「5」の下端まで半円状に伸ばしながら「5伸びたー」と笑ふ野郎ッコの笑顔に笑ひ返しつつ、ヒトの個体による書字行為の獲得段階に関して、認知やシンボル操作の側面であらう「文字の同定能力の獲得」と身体操作技法あるひは運動能力の側面であらう「筆記用具への習熟」は分けて考へる必要があると気づきつつある己だ。
ところで、自分の身体“に”描くのではなく、自分の身体“で”描く方のボディー・ペインティングで「書」をやる、といふ人はどこかにゐたっけか。