日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

MS明朝Ver.2.31 vs Ver.2.50

Windows XPに附属の旧MS明朝(Ver.2.31)からWindows Vista ベータ1に附属の新MS明朝(Ver.2.50)へのアップデートに伴ってグリフデータが変更さった文字に関する、新たな噂を入手した。

この文字のデザインが変ってゐたよと言はれてみればなるほどと気づく非漢字:
‗[U+2017](太下線だったものを二本の下線に)
ℑ[U+2111](二筆だったものを一筆書きに変更)
ℨ[U+2128](勾玉型に止める形だった上半分を払って終はる形へ変更)
ℭ[U+212D](上に曲げ上げてゐた“S”の下端を下に抜いて終はる形へ変更)
㎖[U+3396](“正立のラテン大文字M + イタリック小文字L”から“正立のラテン小文字M + イタリック小文字L”へ)
通常のレンダリングでは違ひに気づく可能性がないだらう非漢字:
ℊ[U+210A](相当拡大してもレンダリング結果に影響が出ないだらう程度のグリフ形状変更を伴ふ制御点の整理)
∰[U+2230](陸上競技のトラックに近かった形を直線の無い楕円形へ変更)
♜[U+265C](相当拡大してもレンダリング結果に影響が出ないだらう程度のグリフ形状変更を伴ふ制御点の整理)
❃[U+2743](相当拡大してもレンダリング結果に影響が出ないだらう程度のグリフ形状変更を伴ふ制御点の整理)
ア(相当拡大してもレンダリング結果に影響が出ないだらう程度のグリフ形状変更を伴ふ可能性がある制御点の整理)
㋐[U+32D0](アの変更に付随する変更)
この文字のデザインが変ってゐたよと言はれてみればなるほどと気づく漢字:
久(右払いの開始位置を下げる)
稹(“タ”の最終画を接して止める形から抜いて止める形へ)
喩(“人”屋根を“入”屋根へ)
嚀(“横倒しの目”の形を“皿”へ)
搔[U+6414](“叉”の左の点の向きを左下向きから右下向きへ)
梛(“那”の左側の横棒を抜くか止めるか = 83-90字形[止める]から78字形[抜く]へ)
漑(“旡”のデザインが“える”型から“かぎ”型へ)
蒺(穴冠が“ルの字”型から“ハの字”型へ)
瘦[U+7626](“臼”型から“E ヨ”型へ)
皂[U+7682](“匕”型から“七”型へ)
絜[U+7D5C](左上の部分が“丯”[U+4E2F]のやうな形から“丰”[U+4E30]のやうな形へ)
茫虻(“亡”が旧字の形へ)
訛(“匕”が止める形から抜く形へ)
踴(“新字”の“勇”から“旧字”の“勇”へ)
凞[U+FA15](“巳”から“犯の旁”の形へ)
蘒[U+FA20](“ヨ”の心棒が“逆さ区の字”と連結してゐなかったものを連結)
﨤[U+FA24](1点之繞から2点之繞へ)
かなり拡大すると違ひに気づくだらう漢字:
紇菇辦(“口”と“寸”が接触してゐたものを分離)
腨(旧字の“羽”の左払いが“かぎ撥ね”に接触する位置)
蒐魏(“鬼”の“曲げはね”が田の字に接触してゐたものを分離)
羽[U+FA1E](左払いが“かぎ撥ね”に接触する位置)
緖[U+7DD6]諸[U+FA22](“日”の左上角が“老かしら”の左払いに接してゐるだけだったものを少し交差する形に)
﨩[U+FA29](“山”が“かぎ撥ね”に接触してゐたものを分離)
レンダリングされる字形に全く変化が無いがグリフデータに変更があった漢字:
械(“廾”の一部に、一直線上に並ぶ「オンカーブ点-オフカーブ点-オンカーブ点」の連鎖があったバグが解消され、不要なオフカーブ点が1つ削除された)
朞(“月”の一部に、一直線上に並ぶ「オンカーブ点-オフカーブ点-オンカーブ点」の連鎖があったバグが解消され、不要なオフカーブ点が1つ削除された)
噂が事実であるならば、我々は、字形の変更(グリフデザインの変更)とグリフデータの変更とを、厳密に区別して論じるべき局面に出会ふ可能性があるやうだ。
過去の関連記事で既に見られたことだけっど、JIS X 0213:2000から:2004への例示字形変更や、人名用漢字・表外漢字字体表だけの影響とは言ひ難い字形変更が、今回も観察されてゐる。
また、これまでに噂の中の人が解明した変更字形は、漢字だけを数えても、毎日系報道の148字でも読売系報道の150字でもなく、160字を超えてゐる。(「制御点の個数が変った漢字」が164字発見さった他、「郞」[U+90DE]のやうに「字形は弄らったけど制御点の個数が変らねぇ漢字」が幾つあるのかは調査方法を思ひつかずまだ調べきってゐないといふ話。)
Microsoft社は、変更字形を全て明示した上で、改めて変更の意図を説明した方が良いのではないだらうか。
また、年末にリリースされる筈のWindows Vista ベータ2に標準添付されるフォントの評価記事を書く予定の方々は、かうした字形変更についてきちんと突っ込んだ取材に基づく解説をしていただきたい。
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