日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

新MS明朝168対132対150の謎

JIS X 0213:2004の規格票で、表外漢字字体表の例示字形に合はせた例示字形の変更が為さった168字のうち、廻・釜など《長い右払いの始筆部分に「ひっかけ」が有っか無ぇか》や、訊・甕など《点画の性質や方向の違ひ》、蜃・蠅など《接触の位置や有無》、《誤字くさかった「牽」の修正》に関係し、従来のMS明朝が変更後のデザインに合致してゐたものが、24字ある。
噂に拠っと、新MS明朝では、これら24字が当然デザイン変更されてゐない他、蟹・灸・膏など平成明朝体の字形変更が《全体的なバランスの調整》とでも表現すべきと思はれる9字(前記3字と、粂・屢・棘・橙・祟・靄)もデザイン変更が無く、また《抜くか止めるか》に関係する誹・徘と、《撥ねるか止めるか》に関係する「隙」もデザイン変更が無かったといふ。逆に、これら36字を除く132字において、新MS明朝でも平成明朝に倣ったグリフデザインの変更が為さったといふ話だ。
「表外漢字における字体の違いとデザインの違い」に示さってゐるやうに、単に表外漢字字体表に適合させるためだらば、「三部首許容」を除いても誹徘や“牙”関係などデザイン変更が不要な字種も多い。JIS X 0213:2004への適合性といふ観点からデザイン変更が不要であるのは、言ふまでもない。
字形変更について各地で話題になってゐる「辻」「葛」など“新人名漢字”がターゲットなのかといふと、さうでもないやうだ。噂が事実であるならば、デザイン変更があった132字の中には“新人名漢字”以外の字種が多く含まれてゐる他、“新人名漢字”の1つである「隙」がデザイン変更の対象では無かったのだ(「隙」については、変更前の平成明朝でも変更後の平成明朝でも表外漢字字体表が規定する字体に合致するのだから、どちらのデザインでも法務省は子の名に相応しい字だと言ふ筈だけっども)。
読売新聞などが報じた字形変更対象の「漢字(約)150字」は、具体的にどの字を指すのか。またその変更の基準は何なのか。今のところさっぱり判らねぇ。