三村竹清日記「不秋草堂日暦」(三村竹清日記研究会)の早稲田大学演劇博物館紀要『演劇研究』掲載状況は、次のようになっている。演劇博物館のバックナンバー紹介記事では各号に掲載されている日記の内訳に関する記述が全く無く、国会図書館の書誌も2010年度34号(連載19回)より前は詳細が採られたり採られなかったりという状態(CiNiiの書誌も本件についてはNDL書誌が基盤になっているものと見え、NDL書誌と同等の情報量)なので、NDL書誌・CiNii書誌の日付欠落分を一部補ってみた(残念ながら欠落分14回のうち補完できたのは8回分だけで、まだ6回分の空欄が残っている)。
n*1 | 掲載号*2 | NDL書誌 | 記録期間 |
(1) | 1992年度 16号(1993.3) | 詳述あり | 明治43年1月1日~明治44年2月10日 |
(2) | 1993年度 17号(1994.3) | 詳述あり | 大正元年12月1日~12月31日 大正2年4月10日~7月21日 |
(3) | 1994年度 18号(1995.3) | 詳述あり | 大正4年11月6日~12月30日 大正5年1月1日~2月23日 |
(4) | 1995年度 19号(1996.3) | 詳述無し | 大正5年2月24日~5月3日 大正5年5月4日~7月31日 |
(5) | 1996年度 20号(1997.3) | 詳述無し | 大正8年8月1日~11月10日 大正5年11月11日~大正6年1月27日 |
(6) | 1997年度 21号(1998.3) | 詳述無し | 大正6年1月28日~5月5日 大正6年5月6日~8月10日 |
(7) | 1998年度 22号(1999.3) | 詳述あり | 大正6年8月11日~10月25日 大正6年10月26日~12月30日 |
(8) | 1999年度 23号(2000.3) | 詳述無し | 大正6年12月30日~大正7年3月27日 大正7年3月28日~6月30日 |
(9) | 2000年度 24号(2001.3) | 詳述無し | 大正7年6月24日~9月17日 大正7年9月17日~11月8日 |
(10) | 2001年度 25号(2002.3) | 詳述無し | 大正7年11月9日~大正8年2月1日 大正8年2月2日~4月12日 大正8年4月13日~6月14日 大正8年6月15日~8月3日 |
(11) | 2002年度 26号(2003.3) | 詳述無し | 大正8年8月4日~10月17日 大正8年10月20日~12月16日 |
(12) | 2003年度 27号(2004.3) | 詳述無し | 大正8年12月17日~大正9年3月8日 大正9年3月9日~5月31日 大正9年6月1日~9月30日 大正9年10月1日~11月28日 |
(13) | 2004年度 28号(2005.3) | 詳述無し | 大正9年12月1日~大正10年3月31日 大正10年4月1日~6月16日 大正10年6月17日~9月20日 大正10年9月21日~11月25日 |
(14) | 2005年度 29号(2006.3) | 詳述無し | 大正10年11月26日~大正11年3月2日 大正11年3月3日~5月27日 大正11年5月28日~7月17日 大正11年7月18日~10月21日 |
(15) | 2006年度 30号(2007.3) | 詳述無し | 大正11年10月22日~大正12年1月14日 大正12年1月15日~5月19日 大正12年5月20日~8月24日 大正12年8月25日~11月21日 |
(16) | 2007年度 31号(2008.3) | 詳述無し | 大正12年11月22日~大正13年3月17日 大正13年3月18日~8月20日 大正13年8月20日~11月28日 大正13年11月29日~大正14年3月16日 |
(17) | 2008年度 32号(2009.3) | 詳述無し | |
(18) | 2009年度 33号(2010.3) | 詳述無し | 大正15年4月1日~大正15年8月1日 大正15年8月2日~12月14日 大正15年12月15日~昭和2年5月12日 昭和2年1月13日~昭和2年9月15日 |
(19) | 2010年度 34号(2011.3) | 詳述あり | 昭和2年9月16日~昭和3年1月22日 昭和3年1月23日~4月13日 昭和3年4月14日~8月21日 昭和3年8月22日~12月7日 |
(20) | 2011年度 35号(2012.3) | 詳述あり | 昭和3年12月8日~昭和4年3月14日 昭和4年3月15日~6月30日 昭和4年7月1日~10月13日 昭和4年10月14日~昭和5年1月23日 |
(21) | 2012年度 36号(2013.3) | 詳述あり | 昭和5年1月24日~5月11日 昭和5年5月12日~8月31日 昭和5年9月1日~11月3日 昭和5年11月4日~昭和6年2月2日 |
(22) | 2013年度 37号(2014.3) | 詳述あり | 昭和6年2月3日~5月10日 昭和6年5月11日~8月31日 昭和6年9月1日~11月7日 昭和6年11月8日~昭和7年2月10日 |
(23) | 2014年度 38号(2015.3) | 詳述無し | 昭和7年2月11日~5月15日 昭和7年5月15日~8月9日 昭和7年8月10日~11月11日 昭和7年11月12日~昭和8年2月10日 |
(24) | 2015年度 39号(2016.3) | 詳述あり | 昭和8年2月11日~4月30日 昭和8年5月1日~8月28日 昭和8年8月29日~12月7日 昭和8年12月8日~昭和9年3月13日 |
(25) | 2016年度 40号(2017.3) | 詳述あり | 昭和9年3月14日~5月5日 昭和9年5月6日~8月24日 |
(26) | 2017年度 41号(2018.3) | 詳述あり | 昭和9年8月25日~11月5日 昭和9年11月6日~12月31日 昭和10年1月1日~4月12日 |
(27) | 2018年度 42号(2019.3) | 詳述あり | 昭和10年4月13日~6月26日 昭和10年6月27日~10月13日 昭和10年10月14日~11月22日 |
(28) | 2019年度 43号(2020.3) | 詳述あり | 昭和10年11月22日~昭和11年1月7日 昭和11年1月8日~4月12日 昭和11年4月13日~6月19日 昭和11年6月210日~9月6日 |
(29) | 2020年度 44号(2021.3) | 詳述あり | 昭和11年9月7日~10月26日 昭和11年10月27日~12月16日 昭和11年12月17日~昭和12年1月23日 昭和12年1月24日~4月4日 |
欠けている部分の情報をお教えいただければ嬉しいし、しかるべき機関できちんと遡及入力・情報共有されてくれれば更に嬉しい。
三村竹清が「ほんのおはなし」(稀書複製会『版畫禮讃』〈春陽堂、1925〉所収、のち肥田晧三・中野三敏 編『三村竹清集2』〈青裳堂書店、1982〉収録)に伝聞として記したある話題――これは『本のはなし』(岡書院、1930)でも一部が再話されている――について確認したくて『演劇研究』の三村竹清日記「不秋草堂日暦」を眺めてみている。
三村竹清の日記「不秋草堂日暦」と、その活字翻刻については、中野三敏『師恩 忘れえぬ江戸文芸研究者』(岩波書店、2016)の「はじめに―江戸通の三大人」(試し読みPDF)で次のように紹介されている。
明治四十三年から歿する昭和二十八年迄、殆んど中断する事なく自身の見聞を克明に書き込んだ、全一四五冊に及ぶ日記は、彼得意の挿図や模写をふんだんに入れて、その材料の珍奇さ、考証の濃やかさ、観察の緻密さ、感想の皮肉ぶり、筆致の豊かさ、どれ一つとっても超一級というべく、趣味を同じくする者にとっては、恐らく『断腸亭日乗』以上の面白さといってはばかる所はない。要するに竹清流江戸学の材料箱そのものというべく、本人もそれを意識してか、現存本は全冊巻頭に一、二丁分の内容細目が、それも蒙求題ふうに、筆者自身の手で奇麗に五字題にまとめて列記される。即ちこのまま引き抜いて印刷に附せば、たちまち第二・第三・第四の「本の話」が出来上る
実はこの日暦は現蔵者早稲田大学演劇博物館の紀要『演劇研究』に有志の手によって翻印の連載が始められた所で、現在昭和六年二月迄進んでいる。是非そちらを御覧戴きたい。但し毎号が原本で二冊ずつほどを収めるので、今のペースでゆけば、全部が終るのはなお七十年の歳月を必要とする。但し、この所翻字のペースも大分早まっているようにも思える。関係者各位、それに読者を志す方々も、何卒健康に留意されんことを。
その『演劇研究』第29号に掲載された「不秋草堂日暦(14)」が、「ほんのおはなし(2)」に出てくる話に記された「生田可久君の話に(大正11年7月4日来話)」の日付を含んでいるのだけれども、そのものズバリの記述が見当たらず、今ちょっと悲しんでいる。
確かに大正11年7月4日に生田の来訪はあるのだが、「ほんのおはなし(2)」に記された話の内容それ自体は、書かれていない。「午後生田君来 板木師伝草稿置いてゆく 夕くれまで話してゆく」としか書かれていないのだ(『演劇研究』第29号270頁)。前後数年間を、じっくり読み返していかないと駄目なんだろうか。
同じ話題は『集古』甲子3号の「洞梅録」にも「生田可久君談」として(日付抜きで)書かれているので、1924年以前に生田が三村に語って聞かせた内容であることに間違いないのだろうとは思うのだが、さて……
あと半年ほど経過し2021年度末になれば、三村竹清日記「不秋草堂日暦」連載30回目となる『演劇研究』45号が刊行されることになるだろう。多人数で校訂・編集が行われた翻刻テキストであるという性質上『演劇研究』掲載の他の記事と違ってリポジトリ公開の対象とならないことは致し方なしと心得るが、人間グーグルの能力を持たない普通の市民として、できれば「竹清日記翻刻30年記念」として有料データベース等で翻刻済テキストの全文検索が可能になって欲しいと願わずにいられない。
2021年10月21日追記:
ツイッターでstarasenriveroさんから国文学研究資料館の国文学論文目録データベースでは「三村竹清日記」での〈検索結果全てに日記の日付が附記されて〉いた旨をお教えいただきました。ありがたや。
同DBでは、どういうわけか『演劇研究』32号に掲載されたはずの「不秋草堂日暦(17)」に関する情報が検索結果に示されないので、他の空欄のみ埋めてみました。