日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

TeX、raisebox、kern、scaleboxよる合字

徳永直『光をかかぐる人々』のTeX→PDF化作業メモ。
本日は河出書房版317頁にある、JIS X 0213外字「舟走」の件。

先日記した通り、この文字が左右合成型であることを活かし、「古典籍のためのTeX」にて原理が紹介されてゐる、raiseboxコマンドとkernコマンドに拠る古典的合字手法によって処理する。

相\raisebox{-0.25zh}{\scalebox{1}[0.5]{舟}}\kern-1zw\hbox{\raisebox{0.25zh}{\scalebox{1}[0.5]{走}}}り申候

考へ方としては、これでいいんだども、偏の「舟」に対して旁の「走」が縮こまりすぎて見え、カッコ悪い。また、「舟」が左に寄りすぎて見える。「舟」は少しだけ右に寄せ、「走」はやや大きくしつつ「舟」に近づけたい。
直感的に数字を決めて、手直ししてみる。

相\raisebox{-0.23zh}{\scalebox{1}[0.5]{舟}}\kern-1zw\hbox{\raisebox{0.22zh}{\scalebox{1}[0.6]{走}}}り申候

まあ悪くない。
左右の幅を縮めてゐる分だけ縦画が細くなり、他の文字と比べてウエイトが軽く見えてしまふ点を、どうにかしたい。といふ思ひも残るんだども、そこまでは手がけない。
単純な考へ方としては、かういふ方向の、千分の五文字分だけ横にズラして重ね打ちするやうな処理で細くなった分を取り返せるはずなんだども――

相\raisebox{-0.23zh}{\scalebox{1}[0.5]{舟}}\kern-1zw\hbox{\raisebox{0.22zh}{\scalebox{1}[0.6]{走}}}\kern-2zw\hbox{\raisebox{-0.235zh}{\scalebox{1}[0.5]{舟}}}\kern-3zw\hbox{\raisebox{0.225zh}{\scalebox{1}[0.6]{走}}}り申候

――画数が増えることによって必然的に縦画が細まる要素を勘案した場合、どの程度太めるのが妥当か落としどころが難しいし、斜めの線に悪い影響が出さうな心配がある。
今回は、偏旁比率のアレンジと偏旁近接で十分とする。
この「舟+走」のやうに比較的偏旁の大きさが似通ったものについては偏と旁とで変形率が大きく違ふことがないので良いんだども、「木+観」(第4水準、2面15区80点、U+023824)みたいなのをこの手法で作字する場合、「木」と「観」で変形率が大きく違ふので、木偏だけ「やせすぎ」るのが気になってしまふだらう。