いつか読んでおかねばと思ってゐた徳永直『光をかかぐる人々』(昭和十八年、河出書房発行、精興社印刷)を、やうやく古書店で入手することができた。装幀は青山二郎。初版6000部のうちの1冊。
この徳永直『光をかかぐる人々』は、徳永の略年譜にも記される著作でありまた本木昌造に関する著作であるとして印刷史に関する話題で触れられることもある書物なんだども、Webcatplusで見つかる所蔵図書館が14、福岡県を除く*146都道府県立図書館で所蔵されているのは下記11館であるといふ、稀少なテキストである。
所蔵図書館 | 所蔵先 | 貸出可否 |
---|---|---|
北海道立図書館 | 一般資料 | 館内利用可 |
千葉県立図書館 | 一般書庫 | 個人貸出不可 |
東京都立中央図書館 | 閉架 | 閲覧注意、貸出不可 |
神奈川県立図書館 | 県立書庫9門 | 不明 |
静岡県立中央図書館 | 書庫2 | 貸出禁止 |
京都府立図書館 | 一般 | 館内 |
愛媛県立図書館 | 書3 | 不明 |
高知県立図書館 | 一般書庫 | 不明 |
大分県立図書館 | 書庫 | 不明 |
長崎県立図書館 | 貴重庫 | 禁帯出 |
熊本県立図書館 | 書庫 | 禁帯出 |
さて、今年は徳永直没後満五十年を経て著作権の保護期間が消滅した年に当たる。またこの初版本は刊行後五十年を経てゐるので、仮に著作権に類似する権利としての版面権の主張があり得るとしても、これもまた消滅してゐると判断される。
かうしたテキストに出会って、このところ全く活動してゐなかった青空工作員第366号でもある己は、さてどうするか。
入力するしかあるまい。
昨年の新暦正月に「いんさつしのけんきうしゃをなのる」と宣言してしまった己だ。己がやらねば誰がやる。
底本の入手が困難でありかつコピー機やスキャナにかけて複製することが躊躇はれる状態の原テキストだから、“文字が読める程度”にデジカメ複製し、校正に役立てることとももしたい。
せっかくだから、さうして「うわづら文庫」化した画像ファイルと、入力中のテキストを、少しずつ同時にブログ形式で公開してしまわう。ひょっとすると、入力=内田、校正=不特定多数、といふ青空テキストにとっての新たな事例が発生するやもしれぬ。
といふわけで、“「うわづら」と「あおぞら」を入力中から同時進行で公開する試み”の場として今年は「あをぞラボ2.0号館366号室」を己の活動の柱としたい。――と旧暦正月の日記さ書いておく。
ちなみに、巨大なテキストアーカイブとなった青空文庫の本体ではなかなか着手しづらい実験を行ふ場として、現在「あおぞラボ」といふ企画が練られてゐて、近いうち青空ニュースで概要が告知される見込みである。「あおぞラボ」類似の「あをぞラボ2.0號館」といふネーミングを使用することを快諾してくださった発案者に、深く感謝申し上げる。
*1:ここしばらく福岡県立図書館のウェブサイトに繋がらない。