日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

矢作勝美氏が1966年に『光をかかぐる人々』続編とニアミス

某所に「TRANSARTブックガイド第二版」がアーカイブされてゐたのに気づき、眺め返してみたところ、こんな記述があった。

矢作勝美「〔社史・伝記類の編集・製作2〕伝記の方法について」《印刷界》1966年12月号によれば、これで完結したのではなく後編が戦後になって《世界評論》1948年11月号〜1949年3月号(上掲浦西論文「『光をかかぐる人々』について」、p.57および『〔人物書誌大系1〕徳永 直』、pp.84-85によれば、《世界文化》1948年11月1日〜1949年4月1日〔3巻11号〜4巻4号〕とするも、ともに未確認)に発表されたが「完結をみないまま徳永直は他界した」(p.58)とのことである。

矢作『伝記と自伝の方法』(出版ニュース社、1971)にはそれらしい記述が全く無かったよなぁと思ひながら宮城県立図書館所蔵の同書を読み返しつつ、福島県立図書館所蔵の『印刷界』1966年12月号56〜59頁ば眺めると、『印刷界』には確かに上記の内容が書かれてあった。
掲載誌に配慮し印刷の世界を題材にして「伝記の方法」について考察した連載を、伝記・自伝一般の話に書き改めて単行本化する際、『光をかかぐる人々』の件が完全に切り捨てられたものらしい。
矢作氏が『光をかかぐる人々』続編の掲載誌名を間違えたのは、矢作『明朝活字』(平凡社、1976)の81頁あたりにおいて、ダイアが「打ち込み方式による字母を作」ったことへの言及はあってもダイアの漢字頻度調査に関する言及がないことから、ご本人が『光をかかぐる人々』続編の内容を直接見てをらず、例へば同時期に『印刷界』で「活版印刷伝来考」を連載してゐた牧治三郎から続編が存在することを伝え聞いたものだったりするからなんぢゃないかと想像してみる己。あるひは当時ご健在だった馬渡力からだとか。