日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

フランス語吹き替え版「プリごろ太」にオススメの書体

さて、前回の記事*1に見られる状況におよそ落ち着きつつあるかに見える、『のだめカンタービレ』の肉声での外国語会話表現だども、まだ試行錯誤が続いてゐるのではないかと想像される場面がある。フランス語吹き替え版「プリごろ太」の書体だ。
のだめカンタービレ』の劇中劇であるアニメ「プリごろ太」、そのセリフがどんな書体によって表現されてきたかといふと。
初登場のLesson 17(3巻139-142ページ)で描かれる「プリごろ太」のセリフは、千秋たちの“電話機越しの声”や“インターフォン越しの声”と同様にタイポス系書体(モリサワ「フォーク」)の縦書きで表現されてゐた。
後にフランス語吹き替え版として登場する「プリごろ太」のセリフは、第10巻70-74ページと81ページでは“仮名の字並びがとても不揃い”といふ特徴をもったPOP書体(ダイナコム「DFP POP2体」)で漢字・仮名が刷られ、16巻20-21ページでは太角ゴシック体(たぶんフォントワークスロダン」)で漢字・仮名が刷られてゐる。
10巻の方も16巻の方もどちらもセリフを横書きにしつつ更に書体を変えて「フランス語吹き替え版」のアニメ音声であることを表現してゐるんだども、なぜ《モリサワ「フォーク」のままで横書き》といふ選択ばしねがったのか。
講談社少女コミック・女性コミックには、電話やラジオなど“スピーカー経由の音声”と、“良い響きの歌声”にモリサワ「フォーク」を使ふ流派があり*2、『のだめカンタービレ』もその両方にモリサワ「フォーク」を使ってゐる。
のだめ“フランス編”において、崇高な世界である“本場の音楽”ば表現するのに横書きのモリサワ「フォーク」を多用することとなった結果*3、決して格好いいものとしては描かれてゐない“アニメ声”の表現にモリサワ「フォーク」以外の書体を使ひたくなってしまってゐるものと己には思はれる。
なほ、Lesson 46でコンクール本選のプレッシャーと体調不良の高熱の中でのだめが見た夢(8巻185-186ページ)に出てくる「プリごろ太」風キャラクターたちのセリフはダイナコム「DFP麗雅宋」で表現されてをり、同じ夢に出て来た「ゆーとくん」のセリフは通常の回想シーンとは異なる角ゴシックだったんだども、Lesson 101冒頭でのだめの夢に出てきた「プリごろ太」風キャラクターたちのセリフはモリサワ「フォーク」だった。
さて、フランス語吹き替え版「プリごろ太」のセリフについて、現時点での最新の表現である太角ゴシック体(たぶんフォントワークスロダン」)に落ち着いても一向に差し支え無ぇんだども、己の勝手な提案として、次の書体はどうだらう。

  • イナピエロ*4――『シュガシュガルーン』の呪文のふきだしに使はれてゐる書体で、アニメ世界の表現に似つかはしく、しかも肉声のファンシー系書体(例へばのだめのお色気表現には写研「ゴカール体」が使はれてゐる)と差別化され得る良い書体と思ふがどうだべか。
  • 字幕フォント*5――これはもう、“書かれてゐるセリフは実は外国語でしゃべくられてゐて、しかもスピーカー音声だ”といふことが一目で伝はり、ひょっとするとおフランスの香りまで漂ってきたりしちゃうスゴイ書体だと思ふがどうだべか。

*1:「『のだめカンタービレ』の外国語表現」http://d.hatena.ne.jp/uakira/20070219

*2:「タイポスのマンガデビューとマンガ表現上の役割」http://d.hatena.ne.jp/uakira/20070221

*3:現在までに写研「スーシャ」が1回だけ試された

*4:有限会社双葉写植「マンガ写研書体」のページに書体見本あり http://ftb-s.co.jp/font/manga_shaken.php

*5:株式会社キネマ・フォント・ラボのサイトに書体見本あり http://www.jimaku-font.com/sample/sample.html