日本語練習虫

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『のだめカンタービレ』の「写植」指定

講談社「Kiss」に連載されてゐる二ノ宮知子のだめカンタービレ』なんだども、手塚治虫文化賞10周年記念の朝日新聞社AERAムック『ニッポンのマンガ』(ISBN4-02-274403-0)132-133ページさ、担当編集者さんの仕事ば紹介する記事が載ってゐる。
『ニッポンのマンガ』133ページでは、ちょうど先日発売された『のだめカンタービレ』第17巻に収録されたLesson 95(「Kiss」2006年No.16号初出)の、17巻8ページ2コマ目のモノローグあるひはナレーションの部分を担当編集さんが編集部で生原稿さ貼り付けるところと、その前後のページの様子や印刷されてきたLesson 95用の“写植”出力紙、17巻8ページに関するテキスト内容と書体を指定する用紙、などが写真入りで紹介されてゐて、次のキャプションがついてゐる。

見よ!写植張りの超絶技巧

『のだめ』完成目前の一コマ

編集部に二ノ宮さんからの原稿が届くと、「写植」(セリフなどが印刷された用紙)を鮮やかな手さばきで切り、どんどん張っていく。
「こんなうまい人、今はもういないですよ(笑い)。ほかの作品ではセリフ部分はデータ入稿が当然。でも、写植張りをすると、1日分だけ締め切りに余裕ができるんです。いつもは二ノ宮さんの仕事場で原稿を待ちつつその場で張って、できたものから順番にバイク便で印刷所に入れたりもします。こんなふうに編集部で張れるのは余裕のある時。修羅場になってくると髪をクリップで留めたりします(笑い)」

さて、確かに『のだめカンタービレ』では、ハリセンの最初のツッコミに(のみ)使はれるモリサワ「キダかな」や、その後のボケやツッコミに欠かせない写研「イナクズレ」・「淡古印」など、「写植」固有の書体も使はれてゐるんだども、その一方でダイナコム「DFP POP2体」・「DFP 麗雅宋」など、「DTP」固有の書体も使はれてゐる。
おそらく、活字書体ば実装するマテリアルが鉛合金であれ写植システムであれDTPフォントファイルであれ、「紙にプリントアウトしたテキストを生原稿に貼る」といふ作業のためのプリントアウトのことを、「写植」と呼ぶ慣例なのだらう。
あるひは、他の呼び名があったりするところを、説明すんのがめんどくさくって「写植」と呼んだのか。
ともあれ、仮にモリサワパスポートやフォントワークスLet'sなどのDTP系多書体環境サービスと、NET-DTPの写植書体で間に合ふ作品の場合、編集者のヒトがさうしたマシンからモバイルプリンタでネームをプリントアウトしちゃえば更に半日か1日分締め切りに余裕ができたりしないんだべかと思った己だった。さういふもんでは無ぇんだべか。
また、モリサワ書体、写研書体、ダイナコム書体、フォントワークス書体などが多数駆使されてゐる『のだめカンタービレ』の「写植」は、1つの印刷所さ発注されてゐるんだべか。写植書体とDTP書体で分離発注ってことは無ぇか。仮に1つの印刷所だとして、今そこで出せる「写植」の書体見本にとても興味がある己だ。誰かこっそり教えてけねべか。