日本語練習虫

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中野重治旧蔵『光をかかぐる人々』への徳永直の書込

Mさんのおかげで自分でも思ってもみなかったほどマンガ文字のことについてあれこれ考へてゐたと判った今日このごろ。
一段落したところで、坂出市立丸岡図書館の中野重治記念文庫Tさんに依頼した中野旧蔵徳永直『光をかかぐる人々』書き込みページの複写が届いた。
第一章の扉に書かれた、「文書のStylに対する解釈説明」「贈物にこめられた贈主の心持のAnalyse」といふのは、中野のメモらしく思はれる。また、16ページ「バビロアだかどこだかの女王が」云々の箇所に「ニ?」とある書き込みは、中野が「一覧を作って送った」といふものの一つに該当する可能性がある。
一方、99ページの「外題料」を「広告料」に直す指示や、148ページの「不遜にも武力をもつて開國を」に「ココトル徳永」の書き込みがあることなどは、中野が『小品十三件』に記した通り、徳永によるもの。
同じ徳永の筆跡でも、263ページの「満ツ川」を「溝ツ川」にといった、第二版の「訂正と正誤」表に間に合った記述もある。
かうして色々な出会ひに恵まれると、津田孝が見たと証言したといふ『世界文化』後の未発表部分にもいつか出会へるんぢゃないかと欲が深くなってくる。『世界文化』連載分までを収録し河出版の部分について第二版と中野旧蔵版で校訂したもののことは「増補版」と称することとし、未発表部分に出会ふ時のために「完全版」といふ呼称を避けておかう。