日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

山岸凉子の四角いフキダシ

はてなダイアリーのキーワード「山岸凉子」ば眺めっと、かういふ端的な説明に微苦笑。

少女漫画家。吹き出しが四角い。

己の記憶が確かだば、『日出処の天子』さ出現する平常語調のフキダシは、四角い。四辺を定規で引き、角を丸めたフキダシなんだども、『アラベスク』第一部・第二部に出現する平常語調のフキダシは、普通に丸い。尻尾がついた風船型だ。
念のため角川の全集で確認してみたっけ、『アラベスク』第一部の平常フキダシは確かに丸い風船だったんだども、第二部の末期にフリーハンドの線ながら“四角化”が始まってゐた。さしあたりこれを「ハンペン型」と呼んでおかう。
全集によっと、このハンペン型フキダシは『妖精王』のスタート時点でも継続されったんだども、1巻(全集18巻)の終盤から定規を使った“四角い”フキダシが描かれ始めった。
『妖精王』の世界観やフキダシのスタイルから判断すっと、どうもこのあたり、つまり1977年頃に、「山岸凉子」が「山岸凉子」になった。――そんな気がした己だ。
この後の長編、つまり『日出処の天子』や、先日第一部が完結した『舞姫テレプシコーラ)』の山岸凉子は、すっかり「(平常語調の)吹き出しが四角い」漫画家である。
更に言ふと、四角いフキダシの獲得は、掲載誌が少女マンガ誌だから少女漫画家だといふ地点から解き放たれることであったかもしんねぇ。