日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

明朝体と宋体の混植

出張の供に、先日講談社文庫に入った村上春樹アフターダーク』ば選んでみた。
一応ストーリーは楽しんだんだっけけど、第3節(a.m.0:25-)の文庫版pp.57-68にある中国語会話に見られる、明朝体(やや重いウエイト)と宋体(やや軽いウエイト)の混植が気になってしょうがない。
幾つか交わされた言葉のうち、p.68にある冬莉の「十九」とマリの「我也是」だけが明朝体で他が宋体だといふなら、二人の大きな接点として強調語句的な活字表現になるのがよく解る。だども実際には、p.68にある、邦訳文でいふ《人がここに迎えにきます。すぐに》を意味する中国語文中の「×上有人来×我」が明朝体で、いま×で示した宋体漢字との混植になってゐる。かといって手持ちの明朝体漢字で表現できる字形をすべて明朝体漢字で刷ってゐるかといふと、さうでもない。p.69でマリが名を告げる際の中国語文に出てくる「我」が宋体だったりする。
奥付には、「本文データ製作」が講談社プリプレス製作部、「印刷」が大日本印刷株式会社とあるが、無原則に行き当たりばったりに書体が選定されたのだらうか。単行本ではどうだったのだらう。著者の構想ではどうだったべか。
いっそ中国語会話を全て方宋体にしてくれてゐれば、こんな点が気がかりになってしまふ己は読者失格だなどと自己嫌悪を味ははずにすんだのにと、八つ当たりを始めてしまふ己だ。