Windows XPからVistaへのアップデートだけでなく、誤字類の訂正は従来も行はれてゐる。例へば、Windows 98(SE)からXPへのアップデートでは、MS明朝がver.2.30からver.2.31へと変はってゐる(MSゴシックはver.2.30で変更なし)。
制御点数が変ったグリフを眺めたところ、次の7字に違ひが見つかった。
- 濈(U+6FC8)
- 「耳」を“出して抜く”形から“接して止める”形へ。
- 犓(U+7293)
- 旁の上側の“山のシッポ”が伸ばされ、上下で繋がるような形へ。
- 璇(U+7487)
- 旁が「施」から「旋」へ。
- 籕(U+7C55)
- 「留」の上半分が「卯」へ。
- 郯(U+90EF)
- 下の「火」を払って終る形から止めて終る形へ。
- 鐖(U+9416)
- 糸頭の間に長く伸ばしてゐた戌の字の“矛先”を短く。
- 顪(U+986A)
- 撥ねてゐなかった“少”のタテ棒を撥ねる形へ。
また、前述したHG明朝/ゴシックの状況も踏まえると、MS明朝/ゴシックの字形変更が行はれる際、すべてがMicrosoft社の指示によるものなのかどうかといった点や、Vistaに関連するMicrosoft社のオーダーはどんな内容なのか――個々の字体を指示するのか大枠のみ示すのか等々――といふ点も関心の的と言ふべきか。
『月刊プロフェッショナルDTP』2005年10月号の記事によると、Microsoft社は、JIS X 0213:2004への対応によって字形が変更されるのは122字程度だとしてゐるらしいが、http://d.hatena.ne.jp/uakira/20050824ではMS明朝のアウトラインデータで132字の変更が確認されてゐる。この132字は、表外漢字字体表対応のJIS X 213:2004対応から「蠅」の変更が抜けた状態の数字である。Vistaベータ1附属フォントの状況は、“定時変更”を除いてその程度の変更に落ち着くことを目指してゐる過程と見ていいのだらうか。