日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

電気柱×電信柱→デンキンバシラ

先日 http://d.hatena.ne.jp/uakira/20070808 で記した件に対する空山さんの反応ば拝見して。

私は当初、「電気柱」=「電気の柱」が語呂の良さを求めて「電気ン柱」になるのは自然なことと思ってをりました。しかしながら、なぜ「電気柱(デンキバシラ)」が「電気の柱(デンキノハシラ)」を経て「デンキンバシラ」にならねばならぬのかといふのを考へますと、http://www.chudenkogyo.co.jp/arekore.html によれば電線を使ふ電力柱の出現が明治二十年で電話の柱が明治二年に東京横浜間を結んでゐるさうですから、《「デンシンバシラ」といふ呼び名がデンキバシラに影響を与えた》説に同意します。

ことのついでに眺めた辞書の様子は次の通り。
明治二一年の『ことばのはやし』には「でんき」「でんしん」も無く、
http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=40077910&VOL_NUM=00000&KOMA=542&ITYPE=0
明治二二年〜二四年の『言海』には「でんき」「でんしん」は有るが「-柱」は無し。
http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=55008098&VOL_NUM=00000&KOMA=425&ITYPE=0
明治二七年の『日本大辞林』にも「でんき」「でんしん」は有るが「-柱」は無し。
http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=40078368&VOL_NUM=00000&KOMA=516&ITYPE=0
明治二九年の『帝国大字典』も「でんき」「でんしん」は有るが「-柱」は無し。
http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=40078286&VOL_NUM=00000&KOMA=535&ITYPE=0
明治三十年の『日本新辞林』も「でんき」「でんしん」は有るが「-柱」は無し。
http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=40078363&VOL_NUM=00000&KOMA=679&ITYPE=0
明治三一年の『ことばの泉』に至り、「でんき」「でんしん」と「でんしんばしら」が載る。
http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=40077905&VOL_NUM=00000&KOMA=489&ITYPE=0
明治三八年の『日本大辞林』は「でんき」「でんしん」有りで「-柱」無し。
http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=54011280&VOL_NUM=00000&KOMA=516&ITYPE=0

また「でんきんばしら」「デンキンバシラ」でウェブを検索してみると、青森、福島、茨城、群馬、山梨、長野、新潟、福井、石川、広島、徳島、佐賀、長崎の各県における「電柱」あるひは「電信柱」の方言として「でんきんばしら(デンキンバシラ)」を挙げるサイトが引っ掛かりました。予想外に多いといふか奇妙な分布といふか。