日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

幼チンパンジーの直感像記憶的能力は成獣や成人より上

今朝のNHKニュースで、「チンパンジーの記憶力 人間より上」といふ話を観た。
http://www3.nhk.or.jp/news/2007/12/04/k20071204000033.html
0.5秒間TV画面に示された5個の数字、中年真っ只中の己達夫婦は、揃って左下の数字を覚えきれなかったんだども、大学生とチンパンジーの幼獣は共に80%の正答率で、更に表示時間を短くすると大学生では正答率が40%まで下がるのに対して幼チンプは80%程度の高い正答率を保ってゐるといふ。
これは単純な「記憶力」の問題ぢゃなくてスポーツビジョンで言ふところの瞬間視の能力に属する問題なんぢゃないか、と感じつつ出勤した己なんだども、職場にあった今朝の日経では、同じ話題が「直感像記憶」能力の問題として触れられてゐた。
スラド*1がネタ元に挙げた記事を記した「AP通信のScience Writer」は「直感像記憶(eidetic imageryまたはeidetic memory)」の語を使はず「短期記憶(short-term memory)」の語のみを使って話を済ませてしまってゐる*2が、紙の日経の他、電子の毎日*3、電子の産経*4などは、「直感像記憶」に言及して記事を記してゐた。
NHKのニュースでも触れられてゐた12月4日付の『Current Biolory』の当該記事*5を読めば、今回の実験で判ったのは《人間でも子供の頃に持っていて加齢と共に失う能力であるところの「eidetic imagery」をチンパンジーも同様に持っているらしく思はれる》といった結論だと受け止められると己は思ったんだども、「チンパンジーの能力は京大生よりスゲー」みたいな一部の動きがあはれなことであった。

Our results may be reminiscent of the phenomenon known as ‘eidetic imagery’ found by Jaensch. Eidetic imagery has been defined as the memory capability to retain an accurate, detailed image of a complex scene or pattern. It is known to be present in a relatively high percentage of normal children, and then the ability declines with age. Our present study shows that young chimpanzees can quickly grasp many numerals at a glance, with no decline in performance as the hold duration is varied. Moreover, the young ones showed better performance than adults in the memory task. Our study shows that young chimpanzees have an extraordinary working memory capability for numerical recollection better than that of human adults. The results fit well with what we know about the eidetic imagery in humans.

ちなみに、直感像記憶は写真記憶とか映像記憶などとも言はれ、Wikipedia日本語版では「映像記憶」で項目が立てられてゐる*6。そこで言及されてゐる谷崎純一郎や山下清の例など、オトナのeidetic imageryは長期記憶に分類されるべき内容であるわけなんだども、幼チンプのアユムは「大きな音で10秒ほど邪魔をされても記憶を失はなかった」ことは実験されてゐるらしいが、長い時間をおいても再現できるかどうか、確認されてゐないらしく見える。どちらかといふと短期記憶の能力と思はれる瞬間視の能力と直感像記憶の能力は、区別してみてもいいんぢゃないかと思ひつつ、チンプ相手にどうやって試験ができるか皆目検討がつかねぇ己、残念。
スラドの記事によると、人間における加齢と本件能力の関係を確認するため小学五年生で追試を行ふといふが、「言語能力が本件能力とトレードオフ」といふなら、もっと若い時期、遅くとも小学一・二年生くらいで実施しないとダメなんぢゃないか。二〜三歳の幼児が持つ超人的能力が四・五歳くらいで無くなってしまふといふ話を幼稚園で聞き及んでゐる己は、実にさう思ふ。もっとも、来週満三歳十一箇月になるウチの野郎ッコを見てると、四歳になりたて程度の幼児に「ちゃんとテストを受けてもらう」のは難しいよなぁとしみじみ思ふけど。
あと、ヒトの成人でも、本件能力に関しては、プロスポーツ選手とかトップアマの方々と一般人では当然統計上有意な差が出てしまふことが容易に予想される*7し、同じ「京大生」で実験しても、体育会の野球部とか卓球部とかバド部など瞬間視の能力が日常的に鍛えられてていい京大生と一般の京大生では有意な差が出てしまふんぢゃないかと思ひ、ぜひさういった追試も行ふべしと念じつつ。
フツーの視力検査で計る視力が右1.5左1.2を保ってゐるんだども、今朝のニュース画面で数字を1つ捉えきれなかったことにとても大きなショックを受けた己だ。……ハッ、今朝のNHKニュースは、NHKの電波なのに、「DS買って、脳トレと眼力トレ始めるべし」って広告だったのか!?