2023年の記事「大阪青山進行堂のピンマーク6種と活字書体3種(付:青山督太郎の略歴と生没年――没年の典拠情報求む――)」の時点ではまだよく判っていなかった、青山進行堂が鋳造した初号活字に見られるピンマークのバリエーションが出揃ったのではないかという感触があるので、活字サイズが表示されている一号活字と二号活字の事例を含めて、ピンマークのフォーマット類型を考えてみました。
内容による分類
「メーカー標」と「サイズ標」
『英和印刷=書誌百科辞典』(世紀社、1943年、441頁 https://dl.ndl.go.jp/pid/1857856/1/233)など、保田訳『印刷全書』(印刷雑誌社、1892年、45頁 https://dl.ndl.go.jp/pid/853849/1/44)以来の少し古い資料を見ていくと、活字の
「辞典」の記述が「活字の體(body)の上部側面にある通常圓形の窪み。製造所の商標、活字の大さ等を表はすことあり」と続いているように、
ここでは「当該活字を鋳造したメーカーを示すものと当該活字の大きさを示すもの」を各々「メーカー標」「サイズ標」と呼ぶことにしておきたいと思います。「


「有徴ピンマーク/無徴ピンマーク」「商標印入り/識別印入り」
今まで、「蛮勇を奮って仮称「西磐井活字」全体の整理を始めたものの築地五号と活文舎五号以外へうまくアプローチできず己の力不足を突き付けられている話」(2024-11-09)などで「商標入りピンマーク/無印ピンマーク」という呼び名を採りつつあったわけですが。これを「有徴ピンマーク/無徴ピンマーク」として、「有徴ピンマーク」に「商標印入り」と「識別印入り」の別がある、とする方が良いのではないかと考えるようになりました。例えば青山進行堂の場合、Ⓐなら「商標印入り」で「青」なら「識別印入り」。


商標や商標以外の識別印(文字や記号)が摩滅したわけではなく最初から鋳記されなかったように見受けられるものを「無徴ピン」あるいは「無徴ピンマーク」と呼ぶことにしようと思います。とはいえ今後も「無印ピンマーク」と記してしまうかもしれません。


外形による分類
「単円型」「二重円型」
先ほど示した一号活字の「商標印入り/識別印入り」ピンマークはここで言う「単円型」でしたが、青山進行堂製の初号活字では今のところ「単円型」は見かけておらず、「二重円型」か「大判型」「小判型」のみとなっています。
手元に集まってきた青山進行堂製初号活字のうち「二重円型」のものを見ると、「識別印入り」(内枠が「青」のもの)は二重円全体が大きいもの(外径10mm程度)と小さいもの(外径7mm程度)の2種類があり、「商標印入り」(内枠が「A」のもの)は二重円全体が大きいもの(外径11mm程度)と一回り小さいもの(外径9mm程度)の2種類があるようです。




「二重円型」ピンマーク入り一号活字の場合、外径は7mm程度で揃っているようですが、「識別印入り」(内枠が「青」のもの)の内枠外径が少し大きいもの(3mm程度)と少し小さいもの(2mm程度)の2通りが見つかっています。


「大判型」「小判型」
いま仮に「大判型」「小判型」と呼ぶことにしたものは外周が長円形または楕円形のもののうち、内容が2行で記載されているものを「大判型」、内容が1行で記載されているものを「小判型」と呼び分けてみるものです。




過去に取り上げた他社製品事例では「秀英初号明朝フェイスの秀英舎(製文堂)製初号ボディ活字と42ptボディ活字」(2023-03-21)がここで言う「大判型」で、「大阪森川龍文堂のピンマーク2種と二号宋朝長体活字・初号龍宋体活字」(2023-05-14)の初号龍宋体活字が「小判型」になります。
「ピンマーク入り初号活字を鋳造していた黒田活版のことを #NDL全文検索 で調べてみた話」(2023-05-05)は1行のもの(田Ⓚ黒)が「小判型」で2行のもの(黒〔改行〕田Ⓚ札〔改行〕幌)が「大判型」になるわけですが、青山進行堂の例も含めて、この系統のものを無理に「大判型」「小判型」に分ける必要は無いのかもしれないなと考えさせられる事例です。
ともあれ、青山進行堂製一号活字では「小判型」の例しか今のところ見ていません。
多くのピンマーク外形は円形か長円形で、今のところ楕円形は森川龍文堂のものしか見ていません。この意味で、「無徴ピンマーク」の例として取り上げた楕円形のものは、「他に例を見ない特徴を備えた無徴ピンマーク」という、ややこしい表現になる事例です。
「表札型」
この他に「大阪加東活版製造所のピンマークと商標」(2023-05-22)で取り上げた縦型の長方形があり、これを「表札型」と呼ぶことにしておきたいと思います。この「表札型」も現時点では加東活版の例しか見ていません。