2020年代に入ってから大きな幸運に恵まれて実現した、古い時代に鋳造されたことが明らかであるような和文活字の大きさを計ってみるシリーズ。
JIS規格より古い時代に鋳造された「号数活字」の寸法は、弘道軒清朝活字を除いて「初号」などの呼び名とおよその大きさは共通していましたが、実寸には各社微妙な違いがありました。
- 「秀英初号明朝フェイスの秀英舎(製文堂)製初号ボディ活字と42ptボディ活字」(2023年3月21日公開、2024年4月10日追記)
- 「初号フェイスの大阪青山進行堂製初号ボディ活字・42ptボディ活字・15mmボディ活字」(2024年4月7日公開)
- 「築地初号フェイスの東京築地活版製造所製初号ボディ活字・42ptボディ活字と15mmボディ規格による錯乱の跡」(2024年4月8日公開)
過去3回ほど記してきた初号フェイス活字に続く4回目となる今回は、築地五号仮名フェイスの活字がテーマです。まだ十分に整理分類していないのですが、よく見ると築地体前期五号仮名フェイスの活字と築地体後期五号仮名フェイスの活字が混ざっているように見えます。ひょっとすると、どちらでもない書体の活字も含まれているかもしれません。
初号活字は1000分の1mmが測れるマイクロメーターで活字ボディの寸法を1本1本拾っていましたが、今回は20本分の寸法(五号20倍相当)をデジタルノギスで計ってみました。20本分をまとめて――というのはプロクター・ヘブラー法を意識したものです(https://x.com/uakira2/status/1122310269286244352)。
というわけで、若干のバラつきはありますが、印刷物の計測から3.71mm角程度と考えていた「築地五号ボディ」規格の五号活字と考えてよいように思われます。
手はじめに計測した100本中98本は「無印ピンマーク」でしたが、1本だけ、極めて重要な商標が刻印された痕跡がありました。1行めの20本を接写した中にあります。
右から5本めの活字(平仮名「り」)に築地活版の商標が刻印されているのでした。
通常ならすべてメツ活字としてとっくの昔に処分されてしまっていてもおかしくない面構えの活字群ですが、よくぞ生き延びていてくれました。