日本語練習虫

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Gaskell「Type Sizes in the Eighteenth Century」メモ

Philip Gaskell「Type Sizes in the Eighteenth Century」(1952/53『Studies in Bibliography』5巻147-151頁)を読んだ。

「活字サイズ」というのは活字ボディの寸法であって文字ヅラの大きさのことではない。

欧文活字の場合――Gaskellによれば――通常大文字(upper case)しかレパートリーを持たないtitling(見出し)活字と、大文字と小文字(lower case)の双方を含むtxet(本文)活字では同じボディーサイズでも文字ヅラの大きさが違っていてtitling活字はボディー目いっぱいに近い大きさに大文字が鋳込まれる(text活字では小文字のディセンダーの分だけ〈大文字の〉文字ヅラが活字ボディーに比べてだいぶ小さくなる)。

――ということを前提に、にも拘らず例えばAlexander Wilson and Sonsの1772年活字見本帳では上記の常識的な活字セットだったところが、同1773年見本帳ではtitling活字なのに小文字も含まれるようになっており、これはCaslonやFryの見本帳でも同様、と。

Gaskellは2つの可能性を指摘していて、1つは例えば「5 Line Pica」と名付けたtitling活字――おそらく従来大文字のみのセットでPica活字5倍にほぼ等しい文字ヅラをPica活字5倍のボディーに鋳込んでいたもの――をPica活字6.75倍とかに鋳込んでいる状態。もう1つは、小文字「g、j、p、q、y」のディセンダーを「カーンド」の状態に鋳造しているケース。

こうした活字に関しては、印刷物から実ボディーサイズを推定するのは難しい。

Picaなど旧称で活字サイズを示す場合titling活字なのかtext活字なのかを併記しておかないと混乱の元だ――とGaskellは書いているのだけれど、solid組なのかどうか判らないような資料がある以上「20行サイズ」方式であっても「実際の活字サイズ」を示すのは困難を伴うよ……と思った己だ。