日本語練習虫

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築地体七号活字(ルビ活字)の前期/後期

一般に「ルビ」活字として使われる七号活字について、牧治三郎『京橋の印刷史』、矢作勝美『明朝活字』『明朝活字の美しさ』、府川充男『聚珍録』いずれも触れていない資料を目にした。
印刷雑誌』五巻四号(明治28/1895年5月)に掲載された、東京築地活版製造所の「改正七号活字見本」である。

国会図書館デジタルコレクション(以下「⿴囗図デコ」)からの図書館送信サービスに基づくプリントアウトなので、画質が極めて荒く、各々の文字種の具体字形について微細な点まで確認することはできないが、およそのイメージをつかむことはできる。
築地体後期五号仮名の実用例は「改正五号」活字見本の発行年と同じ明治31年出現していたけれど、この七号活字はどうなっているか、実用例を幾つか⿴囗図デコから抜き出してみよう。



明治26刊行の西村天囚『屑屋の籠』(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/886145/20

――や、明治28年刊行の福地桜痴『水野閣老・前』(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/888305/4

――などは、この「改正七号」以前の七号活字でルビが組まれていて、明治30年刊行の川上眉山『奥様』(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/885614/10

――あたりから、この「改正七号」が実用に供されているようだ。

上記画像はすべて⿴囗図デコのJPEG(100%)によるため、七号活字(ルビ活字)の具体字形を云々するには不十分な画質・解像度なのだけれども、改正七号活字のルビと従来の七号活字のルビを見比べると「い」「こ」「た」などの〈脈絡〉が取り去られていることなどに気づく。
いずれ、特に「改正七号活字見本」については十分な画質・解像度の資料を入手したい。

ちなみに、この頃の資料を注意深く見ていると、「七号活字」の活字格が「五号活字」の活字格の「ちょうど二分の一」ではないことに気づく(一見するとルビ文字二文字が五号の親文字一文字にぴったり対応しているかのように見えるが、行末に近づくに従ってズレが目立つ事例が多い)。
この「改正七号」の時点では「活字格」の問題は整理解消されておらず、あくまで〈脈絡〉の整理などルビ活字書体としての読みやすさの点で書風(書体)を改めたのみということになりそうだ。