日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

明治六年の楷書活字「〓〓〓鐚〓」

ここ数日、手元のPCにダウンロードしてある国会図書館デジタルコレクションの書誌データのうち、単純な新旧字体差判定ではない「ゲタリスト」候補案件を国デコで眺めている
「三連ゲタ」案件でかつ元素漢字案件だから面白そうだと思ってチェックした『原素略解 : 化学示蒙. 下』が予想以上の掘り出し物だったので、メモ。



表題の「〓〓〓鐚〓」は、白金族の元素「钯(U+94AF)(パルツジユーム)〈Pd:パラジウム〉」「錴(U+9334)(ロヂユーム)〈Rh:ロジウム〉」「銠(U+92A0)(ルセニユーム)〈Ru:ルセニウム/現在は「銠」をロジウムに宛てるようだ〉」「鐚(ヲスミユーム)〈Os:オスミウム〉」「銥(U+92A5)(イリジユーム)〈Ir:イリジウム〉」を記した項の見出し。実はこの『原素略解 : 化学示蒙. 下』は、見出しの大半が「〓」になっている。
以上五種類の白金族元素漢字のうちNDL書誌でも漢字になっている「鐚」のみがJIS X 0208の漢字で、「钯(U+94AF)」がJIS外字、他はJIS X 0212補助漢字)である。

上下巻セット(分冊形式)で作られているので、目次は上巻にまとめられている

ここまでならば特にメモを取るまでも無かったのだが、最終頁を見て驚いた。
刊記の末尾に「鉛版活字売弘并印刷所 元大坂町 山城屋金太郎」と記されているではないか。これは一体どういう素性の楷書活字なのか。刊記を鵜呑みにして良ければ明治六年七月の刊本だ。
名古屋と京都に原資料の所蔵館があるようだから、いつか確認してみなければなるまい。