日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

東京築地二丁目「活版製造所」M15『貮號活字總數目録 全』

読んで字の如く。
以前記した長崎県立長崎図書館が所蔵する「活版製造所」の『貮號活字總數目録』の件なんだども。
このたび実見することができた。

奥付には東京築地二丁目十七番地の活版製造所とあり、版心に「東京築地活版製造所」と記されてゐる。

板倉雅宣『活版印刷発達史』(asin:4900175153)に記載された中で総数見本として最も古い、境田稔信氏所蔵の平野活版製造所『活字總數目録 全』(M11、四号総数見本)に次ぐ、最古期の総数見本である。
残念ながら仮名はすべて「本様」であり「和様」は存在しなかったんだども、『明朝体活字字形一覧』にある小宮山博史氏所蔵のM25二号と比べることで、例えば国字の呎は明治十五年から二十五年の間に活字化されたやうだとか、「叱」は明治十五年から延々この形なんだなぁとか、ちょっと見ただけでも色々のことに気づく。


じっくり見れば、その十年の間の手入れ具合がより詳しく判るだらう。年代もの故若干の虫損はあるんだども、字種の増減等の確認には全く問題ない。
ご尽力いただいた仙台市民図書館と長崎県立長崎図書館の皆様に深謝申し上げると共に、これまでその筋の研究者の間でも全く知られてゐなかった貴重な資料であると、改めてここに記しておく。