日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

津田三省堂の8.5ポイント楷書活字 ― ピンマーク2種

先日ネットオークションで2千数百本と思われる9ポイント楷書活字(と60本程度の6ポイント楷書活字、その他)とスダレケースがセットで格安に出品されていたのを入手することができた。活字の数量と内訳は到着してから数えたもので、実は届くまで「活字は付属…

ベルリン国立図書館に1901年刊行資料のデジタルコピーを注文し代金の支払いに一度失敗したのを挽回しようとしている話

Staatsbibliothek zu Berlinに1901年刊行資料のデジタルコピーを依頼した話 かなり前から初期Typography papersに掲載された記事を読みたいと考えていて、British Libraryにバックナンバーが所蔵されていることに気づいてオンデマンドアカウントを登録し念願…

石崎博志「宣教師たちはどのような字書をみていたか」を見たのだけれど

長いこと読もう読もうと思っていた石崎博志「宣教師たちはどのような字書をみていたか」(以下「石崎2007」)は、科研費の登録情報では掲載誌が「2007年『琉大アジア研究』 第8号1-16頁」と誤って記載されているのだけれど、実際は2007年12月発行の『琉大ア…

〈日本で「活字」という語はいつ頃から使われているか、また「Movable Type」の訳語なのか〉問題を掘り下げるためのメモランダム

※2022年4月5日18時追記:長いので、せっかくのセクション見出しを目次として冒頭に並べ、少し読みやすくしてみました。 目次 1. はじまりのQA 2. 並行世界にて(1)図書室好きのルームメイツ 3. 本木昌造は「活字」という語を使用した文献などを残していな…

北京の国家図書館に貴重書(朱奇齡『続文献通考補』)の文献複写依頼メールを発信

先日来朱奇齡『続文献通考補』の序文を見るため中国国家数字图书馆のユーザ登録を試み「馆际互借与文献传递服务平台」で挫折中だった件につき、複写依頼に関して〈「Special remind」セクションには、「古籍善本・拓片・輿図の特集のコピーが必要な場合は、s…

朱奇齡『続文献通考補』の序文を見るため中国国家数字图书馆のユーザ登録を試み「馆际互借与文献传递服务平台」で挫折中

匠体字としての「宋字」の件で薛煕『明文在』の(錢大鏞らが記した)凡例について、史梅岑『中國印刷發展史』よりも丁寧に典拠資料にあたったものと思われる陳国慶著・沢谷昭次訳註『漢籍版本入門』(研文出版 研文選書19、1984)は、『明文在』凡例の話題に…

薛煕『明文在』の凡例に書かれた匠体字(木版職人の字様)としての「宋字」の話

史梅岑『中國印刷發展史』(臺灣商務印書館、1966)172頁「鉛字體形的流變」の項は、このような書き出しになっています。 鉛字體形,自發明至今日,變化亦多,益合適用。査中文鉛字,習用宋體。錢大鏞明文在凡例:「古書俱係能書之士,各隨其字體書之,無所…

幕末に池田草庵と松崎慊堂が「明朝」と呼んだ刊本字様

私たちがいま「明朝体」と呼ぶ活字書体(印刷文字の書体・字様)の日本におけるルーツは黄檗山萬福寺で天和元年〈1681〉に開版された鉄眼版一切経であると言われていて、この印刷文字書体は日本でかれこれ340年ほど使われています。天保壬寅年〈1842〉に校訂…

堀川貴司「漢籍から見る日本の古典籍」の代替図版リスト

2013年6月6日に開催された講演、堀川貴司「漢籍から見る日本の古典籍 ―版本を中心に―」の中に、自分にとってたいへん興味深い指摘があった。残念ながら実際の講演を拝聴したわけではなく下記の講演録を通じて知ったもので、漢籍を対象とする書誌学の考え方に…

引き続き生田可久が三村竹清に語った「明朝ほり」の話から筆耕の二人のこと

先日「生田可久が三村竹清に語った「明朝ほり」の話が竹村真一『明朝体の話』「三、書者名つきの明朝体」に伝わっているのだけれど」に記した通り、大正11年7月4日に生田可久が三村竹清に語ったという「明朝ほり」の話において「明朝風」の字を書く筆耕とし…

『聚珍録』第一篇に出てくる伴源平『魚名づくし半口合』が伴源平『浪速みやげ』中の一項目だったと判った正月

久々に「府川充男撰輯『聚珍録』(三省堂、2005)愛読者Wiki(暫定版)」の進捗に関する話題。2016年時点の目標を修正し、個々の書目に関するコメントを捨象して簡易なリンク集を作成してしまうことを狙った作業を時折進めていたものを2021年5月5日付でいっ…

名誉教授の訃報

父の逝去に伴い、国会図書館(国内資料課)に父の没年データを提供したのだけれど。NDLへの連絡に先立って、父の最後の勤務大学総務部門への連絡を済ませておいた。某大学、としておこう。この某大学は「某大学 訃報」で検索しても、たまたま訃報が掲載され…

国会図書館の著者名典拠データに父の没年を登録

父が今月逝去した。急なことではあったが、平均寿命は超えており、天寿を全うしたと言ってよいだろう。 国会図書館の著者名典拠データに登録されていることを以前確認していたので、「国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス」(https://id.ndl.go.jp/a…

小秋元段先生の〈一部嵯峨本とその前史に見られる #乙女割付〉論文の存在に今頃気がついた

小秋元段先生の〈嵯峨本前史を形成する書物群に見られる #乙女割付〉論文の存在に今頃気がついた 去る2月20日に開催された #印刷博物館20周年記念トークイベント 第1回 #印刷文化学会議 の第一部、小秋元段「黎明期の平仮名古活字版の諸相」を残念ながらリア…

日本各地で出版された「印刷史」「印刷文化史」本

文明が開化し日本各地に印刷業が成立し始めてから20年ほどが経過した明治半ば、様々な産業で同業者組合が結成されていく中で、印刷業の世界でも概ね都道府県を1つのまとまりとする同業組合が成立していった。 昭和戦前期や高度経済成長期、あるいはコールド…

大正4年の年賀ハガキ(?)巌谷小波『兎の車』の情報求む

入稿原稿風の朱書きが見られる複製原稿風に作られた、大正4年の年賀はがきかと思われる、巌谷小波『兎の車』というのを入手しました。 逓信省発行郵便はがき〈巌谷小波『兎の車』〉複製原稿面原稿用紙を再現したらしく見える内容で、天には罫線と同じインク…

巌谷小波『こがね丸』題字の彫工と同書制作進行のスピード感(付『こがね丸』の活字書誌)

このところ生田可久が三村竹清に語った「明朝ほり」の話の中で明朝を得意とする版木彫刻師として言及されている安井台助(臺助)について色々と調べている過程で、『巌谷小波日記』に安井台助の名が記されていることを知った。先日「幕末明治期の版木彫刻師…

幕末明治期の版木彫刻師安井台助が白百合女子大学小波日記研究会翻刻の『巌谷小波日記』に載っていた

先日記した「生田可久が三村竹清に語った「明朝ほり」の話が竹村真一『明朝体の話』「三、書者名つきの明朝体」に伝わっているのだけれど」の後半に関係する話。生田の話で「川村明朝は川村某の創案にて、入谷の安井台助此風を彫る。安井の忰、川田弥太郎も…

生田可久が三村竹清に語った「明朝ほり」の話が竹村真一『明朝体の話』「三、書者名つきの明朝体」に伝わっているのだけれど

大正11年7月4日に生田可久が三村竹清に語ったという「明朝といふ書風其初は唐本風なりしが、漸く日本化して、嘉永の頃源蔵明朝といふが起これり」と始まる話について、延々と、虫観的に読んでみている。いま分っている範囲で3回、三村はこの話を公に書いてい…

三村竹清日記と『本之話』に見る字彫版木師の標準単価の話

先日「大正11年7月4日来話」とだけ記した生田可久からの聞き書きの件とは別に、やはり「大正11年春」に生田から聞いた話として三村竹清が『本のはなし』に書き残している話題がある。『三村竹清集2』では同書90頁に掲載されている、「文字ほり」と題された話…

仏典字様の活字と明朝様の活字

天理図書館の館報『ビブリア』87号(1986)に掲載された、岸本眞実「近世木活字版概観」に、ちょっと気になる話題が記されている(83頁)。 錦林王府(聖護院門跡)の木活字版『唐鑑』も、私家版に属するものであろう。 この王府に伝来した活字は、仏典の字…

三村竹清日記の『演劇研究』翻刻掲載状況と個人的な願望

三村竹清日記「不秋草堂日暦」(三村竹清日記研究会)の早稲田大学演劇博物館紀要『演劇研究』掲載状況は、次のようになっている。演劇博物館のバックナンバー紹介記事では各号に掲載されている日記の内訳に関する記述が全く無く、国会図書館の書誌も2010年…

フランス国立印刷所のDidotミリメートル式ポイント活字が謎すぎる

横浜開港資料館で開催された平成30年度企画展「金属活字と明治の横浜」の準備を手伝わせていただいた際、小宮山博史コレクションの至宝の1つ『フランス王立印刷所活字見本帖 Spécimen typographique de l'Imprimerie royale』(1845刊)を間近に拝見する機会…

朝倉・深澤『近世木活圖録』とオンライン資源による「活字書誌」試行

朝倉治彦・深澤秋男 編『近世木活圖録 國會圖書館本』(昭和59年5月31日印行、青裳堂書店、日本書誌學大系37)に掲出されている資料を勝手にリスト化してオンラインのリンクを添付。 書誌にしか辿りつけないものは、請求記号をNDLオンラインの書誌へのリンク…

新聞活字サイズの変遷史大正中期編暫定版

以前記した「新聞活字サイズの変遷史戦前編暫定版」の表で明らかなように、第一次世界大戦の影響(欧州産紙パルプの高騰)により新聞用紙価格が暴騰した結果*1、大正6(1917)年から大正12(1923)年にかけて、大手各紙の本文活字は小刻みに小型化されていっ…

壽岳文章・靜子『紙漉村旅日記』(昭和18年向日庵版)の活字

神保町のオタ氏によると、2019年12月14日に長岡京市中央生涯学習センターで開催されたNPO法人向日庵の公開研究会「寿岳文章一家 その人と仕事を追う」で、向日庵が使った活字が質疑になったのだという。向日庵が使った活字が質疑になったが、内田明氏なら分…

『中村汀女・星野立子 互選句集』の12ポイント活字

過日、仙台駅前イービーンズの古本まつりで、『中村汀女・星野立子 互選句集』(昭和22年、文藝春秋新社)を購求した。とある12ポイント活字を使った印刷物が教科書系のコーナーあたりに無いだろうかと期待して出かけて見いだせなかった中、なんとなく気にな…

Typography papers1号2号の記事が読みたくてBLオンデマンド初体験

レディング大学タイポグラフィ&グラフィック・コミュニケーション学部のPaul Stiffによって刊行されていた初期Typography papersの次の2本の記事を、何とかして読みたいとここ何年か思っていて。 Andrew Boag「Typographic measurement: a chronology」(199…

フランス国立印刷局の漢字木活字調査報告に驚く

「国立印刷局の漢字木活字(Printing Chinese Characters, Engraving Chinese Types: Wooden Chinese Movable Type at the Imprimerie Nationale (1715-1819)」https://brill.com/view/journals/eaps/10/1/article-p1_1.xml というヤバい調査報告が2020年3月…

「近代日本語活字・書体史研究上の話題」(『ユリイカ』2020年2月号)注釈リンク集

青土社『ユリイカ』2020年2月号(特集「書体の世界」)に「近代日本語活字・書体史研究上の話題」という小文を書きました。「400字詰め原稿用紙20枚程度」の本文に対して全部で70個ある注釈のうち、印刷されたテキストのままでは辿り辛いもの(ウェブ資源のU…