以前から予告されていた通り、2020年は1月14日付のWindows 7サポート終了で始まって、12月末でのFlash終了で終わる年となっている。
後者については、FlashアニメやFlashゲームなどと結び付けて「平成のインターネット文化」を懐かしむ話題ばかり目にして、電子化された貴重書のインターネット公開が現在も「KmView」というFlashベースのビューワで実施されていることに着目した「世の中の大きな問題」として扱う話題を見た記憶がない。
例えば、山形大学附属博物館「三島県令道路改修記念画帖」や新潟青陵大学図書館「貴重書コレクション」の『Life and Death of Athena, an Owlet from the Parthenon』のように、実質的に一つの資料のみを扱うようなものであれば、仮にKmView経由での閲覧を廃止してPDF等での閲覧に切り替えるということも、そう大げさな話にはならないだろう。
ところが、東京地学協会の「ウェブ図書室」や国立天文台暦計算室「貴重資料展示室」のように、単独の画像ファイルやPDF形式に交じって、それなりの数量をKmView経由で公開しているようなケースはどうだろう。
あるいは、学習院大学図書館「学習院コレクション」や、明治大学図書館「貴重書画像データベース」、お茶の水女子大学附属図書館所蔵「和算資料コレクション」、そして東京学芸大学附属図書館「特別コレクション」のように、大規模資料群がKmViewを前提に公開されているケース。学芸大の望月文庫が見られなくなると困る人も多いんじゃないだろうか。
この方面に国内では飛び抜けて大きな予算と人手を割ける(と想像される)東京大学情報システム部情報基盤課学術情報チームによる「電子版貴重書」ですら、過去2年間を費やしてKmViewからIIIFでの公開に切り替え中(「2018/1/23リニューアル」や「2019/11/21リニューアル」など)という状態になっているようだ。
HTML5ベースでのKmViewが提供される――というようなソリューションが、年末までに実現するのだろうか。
明治初期の平仮名活字資料群である可能性があるのか無いのかということを知るための予備調査として、一時期、広島大学図書館「教科書コレクション」(おそらく全てPDF)や、筑波大学附属図書館貴重書コレクションの「乙竹文庫」(これも概ねPDFだったか)と並んで、学芸大の望月文庫を夢中で眺めていたように記憶している。もう10年以上も前の話。かつて先進的なビューワだったKmViewの採用が、ここに来て悪いレガシーになってしまっていることが切ない……。