日本語練習虫

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Ferguson「A Note on Printers' Measures」メモ

W. Craig Ferguson「A Note on Printers' Measures」(1962『Studies in Bibliography』15巻242-243頁)を見た。

「R. B. McKerrow stated that many composing sticks of different fixed length were used in early prnting shops.(R. B. McKerrowは、初期の印刷所では各々長さが異なる数多くの固定長組版ステッキが使われていたと述べている。)〈『Introduction to Bibliography for Literary Students』1959、64頁*1〉」という最初の1文から、目ウロコだった。

〈固定長(!)の組版ステッキ〉とは?!

いま日本の活版印刷で使われている「ステッキ」は、例えばFranklin type foundryの1889年見本帳に掲載されている「Yankee Stick」に類似した、組版の幅を自由に設定できるものがほとんどだと思うのだけれども。

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Yankee Stick(Franklin type foundryの1889年見本帳より)

最も古い時期の「ステッキ」は、『The Pentateuch of printing, with a chapter on Judges』が掲げる「15世紀の(木製)組版ステッキ之図」のような、木片に切り欠きを作ったもので固定長1行分を組み上げるためのstick(棒切れ)だったのだという。

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15世紀の(木製)組版ステッキ之図

このように原始的な作りの組版ステッキだから例えばOctavo本の行長が63~65mmといった揺らぎがある――というような話ではなく、Valentine Simmesの印刷所で刷られたOctavo本のFergusonによる集計では行長51mmが1点、52mmが1点、54mmが3点、57mmが1点、58mmが1点、59mmが1点、60mmが3点、61mmが1点、63mmが1点、64mmが6点、65mmが1点、69mmが2点、70mmが1点、75mmが1点、76mmが1点。というような具合で、Quarto本でも同様。

これは版面の大きさ(余白の大きさ)を意図して変えたものとしか思えないのだけれど、その動機はなんだったのだろう。飾りの有無などが関係したのだろうか。

*1:Fergusonは1959年版『Introduction to Bibliography for Literary Students』の64頁と書いているけれど、他の版でも構わないだろうか。東北大学附属図書館が、1928年版と1977年版を持っているようだ。