日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

和様二号いろは仮名の全容

先日開催された『平野富二伝』刊行記念講演会で『日本の近代活字』(asin:494761370X)を久しぶりに眺め、各種資料との出会いに恵まれてしまっている自分こそが「和様二号かな」の一覧から欠けているキャラクターの補充をすべき役割を与えられていることに思い至った。
犬も歩けば棒にあたり、野良研究者も歩けば隠されていた資料にあたる。2007年に『教会撮要』という稀少例に出会った際に着想し、その後作成していた和様二号平仮名の「ほぼ全容」がわかるという触れ込みの資料は、板倉雅宣『和様ひらかな活字』(asin:4947613610)の表を補完する形態で、変体仮名はスコープ外としており、また、いろは仮名にも未発見のものが残っていた。
その後に出会った『からのはうた』や『土佐日記参釈』という和様二号多用例によって、今回、少なくとも「いろは仮名」の全てを網羅することに成功した。
土佐日記参釈』は「和様かな」を主体としつつも後の見本帳で「二号細仮名」と呼ばれることになる「本様仮名」や、明治九年の見本帳に現れる小振りな仮名を混用して刷られている(印刷者は本木昌造系統の京都點林堂)という難しい資料なのだが、印刷図書館所蔵の平野活版製造所『活版様式』と、長崎県立長崎図書館所蔵の(東京築地)活版製造所『貮號活字總數目録』を併用することで「和様」の判定に努めた。




上記「α版」は、現時点までに判明している全キャラクタを一覧することのみに努め、どの資料にどのキャラクタが出現するかを網羅・併記はしていない。また、『日本の近代活字』が依拠したはずの『培養秘録』も、秋田市立中央図書館明徳館所蔵本を見る限り、同書の一覧から漏れているキャラクタが散見されるので、いずれ『改正小児養育心得』を含めて再調査の上、ひらがな以外のキャラクタも含めた一覧表としたい。
ともあれ、ここまでの状態で一旦まとめておくことで、自分が埼玉県立浦和図書館所蔵と見られる「文部省原版/明治6年『史略』山口県」を閲覧する際に役立つことは間違いなので、まとめてみた。
国語表記史的な観点からは、例えば『教会撮要』において「き」59回「き起」8回「き希」1回(け希)4回であった――といった、各資料中での出現度数も併記しておくと面白かろうと思うが、『培養秘録』のように数巻にわたる資料で「それ」をやるのかと思うとモチベーション的にしんどい。