総数見本ではないので網羅的では無いんだらうけれど。「活字変体仮名」のことを詳しく知りたく思ふ己には色々と興味深いので、東京築地活版製造所『新調三號和文假名文字體鑑』を読んでみる。
○ごぬだの なほすけうし の うた
やすみしし わがおほぎみの みよかさね しろしめしくる
たかみくら あまつひつぎは かぜのおとの とほきかみよ
に ひさかたの あまつみかみの かみはかり はかりたま
ひて あしはらの みづほのくには わがみこの いやつぎ
つぎに とこしへに しらさむくにと ことさだめ さだめ
またひて ことよざし よざししまにま そのみこの あめ
つちのむた とほながに しろしめすべき たかみくら あ
まつひつぎぞ あめのしたに くにはおほけど きみたちは
さはにあれども かくばかり ことわりしるく かくばかり
みちあきらけく たちとほれる くにあらめやも きみあら
めやもあまつかみの あめつちかけて よざさしし
あがおほぎもの みよはとこしへ
以上が読み間違ひでなければ、「た多」の変体仮名の簡素な崩し字体に二種類のグリフがあったらしいこと(表題末尾「の うた」の「た」と、七行目「つちのむた」の「た」の違ひ)が興味深い。
また、明治三十一年の五号総数見本には見えない「ひ比」があるところも、三号と同系統の字様である六号に「ひ比」があることと併せて興味深い。
さらにまた、五行目「ことさだめ」が“活字体”の「さ」で末尾「さだめ」が“教科書体”の「さ」であることなども、他のサイズ等では見られない特徴ではないかと思ふ。
……
ところで、「ごぬだの なおすけうし」ってどんな人?