日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

マンガのノセ文字

さて、『アイデア』336号(asin:B002HESMNE)で言及した、島本和彦炎の転校生』(『週刊少年サンデー』1985年40号)の図版なんだども:

この「出た! 暗黒流れ星!!」といふ必殺技の名称に見られるような文字の刷り方を、「スミノセ」文字と呼ぶことを、美術出版社『印刷・製版の表現技法』(asin:456832162x)によって今頃知った己。
よく見るとこれは、同書の表現を借りれば「スミノセ」文字に細く「白フチドリ」をした状態である。

一昨日「写植でネガ印字(黒地に白文字)ってアリなんだべか」に記した疑問は、小学館叢書版のタイトル文字が、単なる「白ヌキ」文字の「黒フチドリ」にしては文字の周囲の黒塗り部分が大きく、まるでラベルライターで黒地テープに白文字を刷ったような感じに見えるんだけど、何故だらうといふ話。

ワザとやったのか、どこかの過程での手抜きによってさうなっちゃったものなのか。
念のため、件のタイトル文字を再掲しておかう。

……
ちなみに、古いマンガではトビラ頁の作者名くらいしかノセ文字にはなってゐなかった印象がある己。
池田理代子ベルサイユのばら』(『週刊マーガレット』1972年37号)のトビラを見返してゐて、『銀河鉄道999小学館叢書版の題字の謎が、少しだけ自己解決した。

おそらく、ルビがからむテキストについては、ルビ文字列と親文字列全体を囲む矩形の範囲について背景を塗りつぶすといふポリシーで、ワザとやった作業なんだらう。
とすると、さういふ指定方法(および技術)は一体、何といふものなんだらう。さて。
……
ついでに、みなもと太郎『ふたりは恋人』(『週刊少女フレンド』1972年50号)からの図版:

ほぼ全篇白ヌキ文字でネームが刷られてゐて、最後のコマだけ白い印画紙に黒文字で刷られた写植文字を極力絵を隠さないよう不定形に切り抜いたと思しきテキストが貼られてゐるらしく見える。
……
マンガタイポグラフィ研究のひとつのテーマとして、本文頁での白ヌキ文字指定やスミノセ文字指定の始まりの頃をつきとめたいと、ちょっと思ひ始めてゐる己。