日本語練習虫

旧はてなダイアリー「日本語練習中」〈http://d.hatena.ne.jp/uakira/〉のデータを引き継ぎ、書き足しています。

思誠堂と由己社の四号平仮名混用資料

うさぎ屋誠(うさぎや誠/兎屋誠)こと望月誠関連の話題を求めてゐだっけ、まんだら堂さんのブログに行き当たった。2007年1月20日付の記事に望月の名が出てゐる。
近代デジタルライブラリーにある『子育の草紙』は印刷局の五号と前期築地五号で刷られてゐるやうだけっども、明治十三年に由己社から出た『火災保険論』『火難よけ』の序文さ、問題の四号混用状況が見られる。
無用学博士こと尾佐竹猛『法曹珍話 閻魔帳』(大正十五年春陽堂)とまんだら堂さんのおかげで、この資料に出会へた。
また、由己社名義では検索漏れする桑原徳勝名義の明治十二年『夫婦寝物語』も、前期築地四号を中心にした混用である。
うさぎ屋資料(及び由己社資料)に出会ふまで、近代デジタルライブラリー所蔵明治十年代資料を一通り眺めても「特記事項なし」に終はるんぢゃないかと思ってゐたんだども、さうでは無がった。まだまだ整版モノが多く活版でも漢字カタカナ交り表記が基本であって平仮名活字書体史の観点からは荒野なんだらうと思ってゐだった明治十年代前半期の印刷物は、存外巨大な鉱脈を秘めた密林だといふ具合に見方を変へる必要があるみてぇだ。
まだ明治十年〜十二年のNDC三類を眺めたついでにちょっと寄り道ばしてるってだけの段階だといふのに、この調子で少なくとも近代デジタルライブラリー資料中幕末から明治十三年頃までのものは全て見るべきではあるまいか、いやいやかうして時折思ひがけねぇ資料から声がかかる己は絶対そんだけの資料群に呼ばれてる状態に違ひねぇから導かれてる間はどこまでも突き進むべきとの強迫観念に憑れてしまひ、第二の人生の宿題が増える一方の己だ。
呼び声の主に、どいな所さ連れて行がれつつあるんだか、今の己には全く判らねぇ。